研究課題/領域番号 |
21K07359
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
野口 倫生 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (00432394)
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研究分担者 |
猪原 匡史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (00372590)
細田 公則 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 客員研究員 (40271598)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肥満 / RNF213 / 脳血管障害 |
研究実績の概要 |
脳梗塞の主要な原因の一つである頭蓋内主幹動脈狭窄はアジア人に多く、遺伝素因が示唆されてきた。Ring finger protein (RNF) 213遺伝子がもやもや病の感受性遺伝子であることが確認され、同遺伝子多型p.R4810Kは、日本人患者の80~90%が保因しているが、日本人健常者の数%も同様に保因している。また、p.R4810Kは動脈硬化性頭蓋内動脈狭窄症にも一定数認められ、頭蓋内閉塞性変化を来す共通した素因であることが示唆されている。分担研究者の猪原らは日本人46,958名(脳梗塞17,752名,対照29,206名)を対象に,RNF213 p.R4810K多型を調べたところ,日本人の脳梗塞の強力なリスク遺伝子と判明した(Circulation 2019)。またRNF213遺伝子p.R4810Kバリアントが、冠攣縮性狭心症と関連することを見出した(JACC Asia 2023)。RNF213遺伝子がコードするミステリンはATP加水分解活性や物理運動活性、ユビキチンリガーゼ活性を示すことが報告されてきたが、脂肪滴表面に局在することが明らかとなり脂肪滴の安定化への寄与および脂肪分解を調節することが報告された。さらに肥満度と病型別脳梗塞の発症リスクとの関連について、男性女性共にBMIが高いほどラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクが高いことも報告されている。研究代表者の所属機関の脳血管障害及び肥満の臨床データベースとRNF213遺伝子多型の解析を組み合わせることで臨床・ゲノム情報統合データベースを構築し、肥満を有する患者のRNF213遺伝子多型の保有率、RNF213遺伝子多型と肥満との関連及び脂質代謝との関連を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度と同様に家族歴を有する高度肥満と脳血管障害を有する家系の調査がコロナ禍の影響を受け困難となり、下記の遺伝子多型と肥満及び脂質代謝異常との関連解析について症例を増やして検討を行っている。脳血管障害と肥満を有する患者を対象としてRNF213遺伝子p.R4810K多型の解析を行い、脳血管障害のRNF213遺伝子p.R4810K多型保有率と比較する。脳血管障害と肥満を合併する患者の遺伝的素因の解明を目指す。 RNF213遺伝子p.R4810K多型と肥満及び脂質代謝異常との関連解析 選択基準:脳血管障害(脳梗塞,脳出血,無症候性頭頸部動脈狭窄・閉塞症,くも膜下出血,脳動静脈奇形,硬膜動静脈瘻など)の診断で国立循環器病研究センターに外来受診,入院し、かつ肥満を有する患者あるいはそのいずれかを有する患者、及びいずれも有さない患者 解析方法:RNF213遺伝子p.R4810K多型の保有率及び肥満、脂質代謝異常との関連解析を行う。肥満度(身長、体重、BMI、体組成検査)、脂質代謝マーカー(生化学検査項目:総コレステロール値,LDLコレステロール値,HDLコレステロール値,中性脂肪値等)とRNF213遺伝子p.R4810K多型の関連、②血管内皮機能、動脈硬化検査所見(FMD, CAVI, sdLDL, Lp(a), 酸化LDL、RLP-C)とRNF213遺伝子p.R4810K多型の関連 現在、引き続き上記に該当する患者の臨床データ収集の蓄積と遺伝子多型解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究計画に加えて肥満および脳血管障害を有する対象者、肥満と脳血管障害のいずれかを有する対象者あるいはそれらのいずれも有さない対象者の症例を収集する。バイオバンク同意を得ており、臨床情報とDNA等の試料を有する症例と新規症例について登録を進め、臨床・ゲノム情報統合データベースを構築する。 さらにそれらのデータベースを用いて関連解析を行う。肥満を有する患者を対象としたRNF213遺伝子p.R4810K多型の解析を行い、RNF213遺伝子p.R4810K多型保有率を解析する。さらに健常人のRNF213遺伝子p.R4810K多型保有率を解析し比較検討を行う。RNF213遺伝子多型と肥満度及び総コレステロール値,LDLコレステロール値,HDLコレステロール値,中性脂肪値アポ蛋白、リポ蛋白分画などのなどの脂質代謝マーカー及び、sdLDL, Lp(a), 酸化LDL、RLP-Cなどの動脈硬化関連脂質代謝マーカーについ関連解析を行い、オッズ比を算出する。また交絡因子を検討し多変量解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度までにRNF213遺伝子p.R4810K多型解析について一部は既に行っているものの、症例数を増やし、健常者の症例も含めて解析を行う方針とした。新規および既存の疾患患者と健常者の選定、登録を行い、臨床情報のデータベース化を中心に進めた。そのため次年度使用額が生じている。症例が蓄積した段階でまとめて研究用のバイオマーカー解析や遺伝子多型解析等を行う予定である。さらにデータ収集、統計解析等に使用を予定している。今後も研究計画に基づき、DNAの収集、調整に関して国循バイオバンク同意を有する症例についてはバイオバンクと連携し、検体収集及びDNA調整後に提供を受けるものとする。継続して新規症例について登録を進め、臨床情報と遺伝子多型との関連解析を行う予定である。
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