全国の医療機関から依頼された原因不明の高中性脂肪血症の解析を継続した。その結果、この症例では、2つの中性脂肪代謝に関わる分子、glycosyl phosphatidyl inositol-anchored high density-lipoprotein binding protein1 (GPIHBP1)とlipoprotein lipase (LPL)に対する自己抗体が高値であること、糖質コルチコイドや免疫抑制剤を用いた治療によってこれら自己抗体量が減少し、高中性脂肪血症が改善したことから、この2つの自己抗体が高中性脂肪血症の原因であったと考えられた。この症例について、2023年に英文論文と学会発表を行なった。 次に、男性安定狭心症患者における抗LPL自己抗体が脂質代謝、冠動脈プラークにどのような影響を与えるのかを検討した。LPLの部分ペプチド(14アミノ酸)を固相化したプレートを用いて抗LPL自己抗体価測定のhomemade ELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)を構築した。共同研究者である県立西宮病院循環器内科に受診している男性安定狭心症患者の血液検体を用いて抗LPL自己抗体価や各種血清パラメータを測定し、経皮的冠動脈形成術における血管内超音波の各種指標との関連を検討した。その結果、抗LPL自己抗体高値群では血中のレムナントが有意に増加していること、抗LPL自己抗体価は冠動脈プラークの脆弱性と有意な正相関を示すことを見出した。さらに、我々がこれまでに報告していた抗apoB-100自己抗体価と、抗LPL自己抗体価を組み合わせることにより、早期に治療介入が必要な不安定プラークを持つ症例が検出できる可能性があると考えられた。この内容について、国内学会発表と英文論文発表(2024年受理)を行なった。また、男性安定狭心症患者における抗apoB-100自己抗体価と予後の関係について、国際学会発表を行なった。
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