研究課題
行なった実験は、1.使用マウスモデル(BALB/c)、Group1(4匹):菌投与なし、Group2(3匹):ピロリ菌SS1株投与、Group3(3匹):ピロリ菌SS1株+Actinomyces oris投与、全てのマウスにIL-10(20 U/mouse)を継続的に投与した。結果は、1.抗体価測定では、Group1に比べ、菌を投与したGroup2とGroup3では総IgGが上昇した。IgGサブクラス測定では、Group2とGroup3を比較すると、Group3の方がIgG2/IgG1比が低く、より液性免疫優位となった。2.サイトカイン測定では、IL-1βとIL-6は炎症性サイトカインである。IL-1βは、ピロリ菌の感染があるGroup2とGroup3において、ピロリ菌を含む抗原刺激をしたもので高値を示す傾向があった。IL-6ではGroup2とGroup3において、抗原の種類によらず刺激を行ったもので高値を示す傾向があった。3.サイトカインmRNAの発現では、Th1の細胞性免疫を反映するIL-12とIFN-γは、Group1に比べGroup2とGroup3で発現が低下し、特にGroup3ではそれが顕著であった。Th2の液性免疫を反映するIL-13は、Group1に比べ、Group2では発現が低下し、Group3では発現が増加した。同じく液性免疫を反映するIL-4とIL-5は、Group1では発現がわずかに見られたが、Group2とGroup3では見られなかった。4.胃組織像の評価は、HE染色標本において、Group1では明確な炎症像は見られなかったが、Group2とGroup3では多くのリンパ球が観察できた。また、Group2よりもGroup3の方がより大きなリンパ球の集簇が見られた。さらにGroup2とGroup3では粘膜腺管構造の乱れも観察できた。Ki67免疫組織化学染色標本においては、Group3では胃粘膜のいくつかの細胞が染まっているのが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
ピロリ菌感染による萎縮胃炎を起こした患者と胃癌患者を対象に、ピロリ菌以外の菌(特に硝酸塩還元菌)の胃内生息状況を明らかにし、胃癌患者の胃粘膜萎縮の程度と硝酸塩還元菌の関連、また、胃粘膜萎縮を起こした患者と胃癌患者の胃内生息状況に違いがあるかを検討した。萎縮胃炎ではclosed typeよりopen typeの方が菌数は多くなり、胃癌になると菌数は急激に増加した。さらに、胃粘膜萎縮が進行するほど、さらに胃癌になるほど、検出される菌種に硝酸塩還元菌の割合が高くなった。菌種同定の結果、Closed typeでは検出された硝酸塩還元菌はすべて口腔内細菌で、open typeでは、69%が口腔内細菌で31%は腸内細菌であった。また、胃癌では47%が口腔細菌で53%が腸内細菌であることが判明した。
マウス感染実験において、胃癌患者からの多数の硝酸塩還元菌を分離した。これらの菌を使って、マウスの感染実験をさらに進める予定である。
研究を継続しているため、特に動物の感染実験を長期に行っているため
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Helicobacter
巻: 27 ページ: e12874
10.1111/hel.12874
Microorganisms
巻: 10 ページ: 2495-2505
10.3390/microorganisms10122495