慢性腎臓病(CKD)は国民病のみならず、世界においてもパンデミックな状況にある。中でも重症化するCKDの主たる原因は糖尿病性腎症であり、新規透析導入患者で最も多い原疾患となっている。他のCKDと比較しても、予後は極めて不良である。近年、糖尿病性腎臓病(DKD)という疾患概念が提唱されているように、糖尿病を背景としていても非典型的な腎症の進行を認める症例が多数あることが知られている。糖尿病性腎症の診断基準の1つである微量アルブミン尿では、腎症の早期発見に至っていないのが現実であり、治療の面でも、腎機能低下を遅らせる対処療法しかない。本研究では、podocyte lossが不可逆的な腎機能低下の原因であることに着目し、糖尿病などの各種腎疾患における、ポドサイトの細胞恒常性の破綻がもたらされる機構を、細胞膜に存在するGタンパク共役受容体CXC chemokine receptor type 4 (CXCR-4)・CXC chemokine receptor type 7 (CXCR-7)を中心に解析を進めた。各種腎疾患による、ポドサイトの恒常性や形質の変化を経時的に解析することで、ポドサイトに特異的に発現する分子群の腎症における分子病態を統合的に理解し、腎症の病態・病期ごとに特異的な分子を抽出し、新たな診断のためのバイオマーカーの樹立と新規分子標的治療の探索を行った。 糖尿病性腎症モデルによる病態を反映するポドサイト特異的分子群の機能解明のために経時的に採取したマウスの腎組織において、ポドサイトの新たな標的分子Gタンパク共役受容体CXC chemokine receptor type 4 (CXCR-4)・CXC chemokine receptor type 7 (CXCR-7)の発現変化を免疫組織化学染色にて解析を行った。
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