研究課題/領域番号 |
21K07374
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
五家 里栄 自治医科大学, 医学部, 臨床助教 (00894891)
|
研究分担者 |
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
三浦 光一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90375238)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | NASH / 酸化HDL / 心血管イベント |
研究実績の概要 |
心血管イベントのリスク評価方法の一つにFramingham Risk Score(FRS)がある。この予測式は心血管イベントのリスク因子である総コレステロール、またはLDLコレステロール値が含まれている。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の死因は心血管イベントが多く、進行したNAFLD(肝硬変)ではさらにそのイベント数が多くなると報告されている。しかし肝硬変ではコレステロール産性能が低下するため、FRSが必ずしも高値とならない可能性がある。私たちは、酸化HDLが肝線維化進行とともに上昇することを報告した。よって酸化HDLはコレステロール値に代わり、NAFLDの心血管イベントリスク評価のための新しいマーカーになりうる可能性がある。本研究では酸化HDLがFRSに変わりうるような指標となるのか、さらにNAFLDにおける心血管イベントの関連を明らかにする。また酸化HDLは肥満では必ずしも高値とならなかったことから、サルコペニアが合併しやすい肝癌合併例での測定の有用性を明らかにする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最初の報告では健常者32人および106人のNAFLD患者で酸化HDLを測定した。NAFLD患者は線維化の進行度をFIB-4 indexやNAFLD fibrosis scoreを用いて3群に階層化した。FRSは軽度線維化群より中等度線維化群で高値となったが、高度線維化群では頭打ちとなった。酸化HDLは線維化の進行とともに徐々に上昇した。106人の中で虚血性心疾患を有する症例は4例であり、いずれも中等度線維化群または高度線維化群であった。この4例の酸化HDL濃度はNAFLD患者の平均を超えていた。このことから酸化HDLは心血管系イベント発見のバイオマーカーとなり得る可能性があるが、これまでの検討ではnが少なく、検定ができなかったので、現在、症例を増やしている。また、NAFLDにおいて、酸化HDLは肥満患者より握力低下例(サルコペニア予備軍)で高値となる傾向があり、さらに症例を増やしている。特に肝細胞癌の合併はサルコペニアが多くなることから、それら症例での検討も開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きNAFLD症例をさらに収集し、データの蓄積を行う。これまではFIB-4 indexやNAFLD fibrosis scoreのみ線維化階層化を行っていたが、M2BPGiなどの他の線維化マーカーや肝硬度測定でも階層化も行い、検討を行う。またNAFLDにサルコペニアを合併すると心血管イベントが多くなるという報告もあり、サルコペニアNAFLD症例も集積したい。またサルコペニアに関連して肝細胞癌合併例での検討も行う。さらに酸化HDLが肝細胞に与える影響を見るため、培養細胞を用いた研究も開始予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度、COVID-19感染症蔓延に伴い、研究制限や学会出張の制限があり、一時研究活動を制限せざるを得なかった。今年度は現時点で制限はないため、研究活動として学会出張を行っていく予定である。
|