研究課題/領域番号 |
21K07377
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山口 慎太郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50464855)
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研究分担者 |
本間 康一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10383762)
木内 謙一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50528578)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | NAMPT / NAD(+)合成系 / 血管内皮細胞 / NAD(+)中間代謝産物 / NMN / インスリン抵抗性 / 肥満 |
研究実績の概要 |
本研究では血管内皮細胞NAMPT-NAD(+)合成系の肥満2型糖尿病発症における役割を検討することを目的としている。具体的には、①血管内皮細胞特異的Namptノックアウト(Vascular endothelial cell-specific Nampt knockout: VeNKO)マウスを用いた、血管内皮細胞NAMPT-NAD(+)合成系のエネルギー代謝障害・インスリン抵抗性発症における役割、②NAD中間代謝産物NMN (nicotinamide mononucleotide)を用いた血管内皮細胞NAD(+)量の回復が肥満2型糖尿病発症を予防するか、を検証事項とする。これらにより、肥満2型糖尿病発症における血管内皮細胞NAMPT-NAD(+)合成系の役割が明らかとなり、血管内皮細胞NAMPT-NAD(+)合成系を標的とした肥満2型糖尿病の新規予防法開発につながると考えている。 2021年度は、Nampt-floxed マウスと、血管内皮細胞で Creを発現する VeCadherin-Creマウスを用いて、VeNKOマウスの作成に成功した。通常食投与下においては、2-3ヵ月齢までには、体重を含めたエネルギー代謝、糖代謝は、コントロール群と比較して、有意な差がないことを確認した。そこで、高脂肪食負荷を行っている。コントロール群と比較し、体重には有意な変化を認めないものの、fat・glucose oxiadation、脂肪分布に変容を呈することを見出した。また、腹腔内インスリン負荷試験より、VeNKOマウスでは、コントロール群のマウスと比較して有意なインスリン抵抗性を呈することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nampt-floxed マウスと、血管内皮細胞で Creを発現する VeCadherin-Creマウスを用いて、血管内皮細胞特異的Namptノックアウト(Vascular endothelial cell-specific Nampt knockout: VeNKO)マウスの作成に成功した。 VeNKOマウスを用いて、血管内皮細胞NAMPT-NAD合成系の通常食投与下、高脂肪食投与下における糖代謝制御における意義の検討を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度終了時までに血管内皮細胞特異的Namptノックアウト(Vascular endothelial cell-specific Nampt knockout: VeNKO)マウスの作成に成功した。さらに、VeNKOマウスを用いて、血管内皮細胞でのNAD+の枯渇が、全身の糖代謝障害やインスリン抵抗性発症を制御するかの検討を行った。具体的には、腹腔内インスリン負荷試験、腹腔内ブドウ糖負荷試験、経口ブドウ糖負荷試験により、VeNKOマウスは通常食投与下ではインスリン抵抗性を呈さないことを見出した。 そこで、高脂肪食を投与すると、体重はコントロール群と有意な変化はないものの、有意なインスリン抵抗性を呈し、その背景に脂肪分布ならびにエネルギー代謝の変容をきたしている可能性を見出した。 上記の結果をもとに、本年度は、脂肪分布やエネルギー代謝変容が生じる機序を、血管新生の観点から検討を進めていく。 最終的には、インスリン抵抗性や脂肪分布の変容が、血管内皮細胞のNAD+量依存性であるかを検討すべく、NAD+中間代謝産物であるNMN(nicotinamide mononucleotide)をVeNKOマウスに経口投与する。血管内皮細胞のNAD+量の回復により、インスリン抵抗性が改善するかの評価を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に購入予定であったNMNを2022度以降に購入することが最大の要因である。2022年度に、血管内皮細胞特異的Namptノックアウトマウスの表現型を確認し、さらにpilot studyを行うことで、血管内皮細胞特異的Namptノックアウトマウスの血管内皮細胞NAD+量を回復するに十分なNMNの投与期間・投与量の検討を行う。上記結果をもとに、検討に必要なマウス数・NMN量の詳細な検討をすすめることとし、本年後以降にNMNを購入する方針とした。
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