研究課題/領域番号 |
21K07382
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研究機関 | 第一薬科大学 |
研究代表者 |
長島 史裕 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (60228012)
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研究分担者 |
香川 正太 第一薬科大学, 薬学部, 講師 (30463201)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肥満 / 漢方補腎剤 / 六味丸 / 牛車腎気丸 |
研究実績の概要 |
まず、六味丸についての検討を行っており、高脂肪食(HFD)に六味丸(RG)を混合した餌(HFD+RG)をC57BL/6Jマウスに与えて検討を行った。 その結果、8週間で認められるHFD群での体重増加に対して、HFD+RG投与群で予想していた有意な体重増加抑制効果が認められなかった。また、エネルギー代謝に関わるUcp1遺伝子発現は白色脂肪および褐色脂肪において検討したが、体重増加抑制が認められなかった結果と連動して、HFD群とHFD+RG群で大きな変化は認められなかった。このことより、RGは抗肥満作用を有していないことが確認された。一方で、HFD群で有意に増加した空腹時血糖はRG投与によって有意に減少しており、高血糖を改善する効果が見いだされた。ただ、空腹時血中インスリン値には大きな差が認められず、算出したHOMA-IRについても同様に2群間の有意差は認められなかったため、インスリン抵抗性は改善されないことが認められた。 例数は十分ではないが、HFD群と比較してHFD+RG群にマウスにおいて、白色脂肪におけるアディポネクチン遺伝子発現が高い傾向にあり、また、TNF-α遺伝子発現は減少傾向にあった。 興味深いことに、HFD群において有意に高い血中コレステロール値は、RG投与によって有意に減少しており、肝コレステロール分解に関わる酵素であるCYP7A1の遺伝子発現は増加傾向を認めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
六味丸の抗肥満作用についてのある一定の研究データが見いだされたことより、研究は順調に進んでいると考えられる。また、コレステロールを低下させるという新たな作用を見出すことができた面では、六味丸の予期せぬ作用が発見され、肥満病態における肝脂質代謝不全の改善に六味丸が有用である可能性は今後の研究を発展させる新たな「種」となる可能性が考えられた。 .
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今後の研究の推進方策 |
今後は、課題に挙げている「牛車腎気丸」の抗肥満作用について解析を進めていく予定である。既に牛車腎気丸のエキス製剤は入手しており、これを用いて高脂肪食混餌を作成し、早速マウスに摂餌していく準備を進めている。 さらに、六味丸の作用として新たに見いだされたコレステロール低下作用やアディポネクチン発現およびTNF-α発現の制御についても例数を増やしてデータを確定していく。肝脂質代謝を正常化していく作用は体全体で発生するであろう様々な病態の制御とリンクしている可能性があり、追試を行う必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
見積もり金額と最終購入金額の差額の影響で残金となった.次年度に実験器具や試薬等の消耗品等の購入に使用する。
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