最終年度は牛車腎気丸(GJG)の抗肥満作用について検討を行った。六味丸と同様、マウスを3群に分け、普通食群、高脂肪食群および高脂肪食+GJG混餌群としてそれぞれの処置を行った。結果として、高脂肪食で有意に増加したマウスの体重増加をGJGは抑制することができなかった。そのため、GJGには抗肥満作用がないことが証明された。そこで、マウスを解剖し、代謝性疾患に関わる肝および骨格筋を採取後、様々な検討を行った。その結果、GJG処置によって、この2つの組織に含まれる中性脂肪含量の有意な低下を認め、その中でも、高脂肪食によって惹起される骨格筋の異常に対し、GJGは回復の方向に作用することがわかってきた。特に、肥満に伴って惹起される筋萎縮に関わる因子であるMuRF1遺伝子発現の低下、TNFαをはじめとする各種炎症性サイトカインの低下を見出すことができた。筋萎縮を惹起する因子によって誘導される細胞内シグナル伝達、p38MAPKリン酸化およびリン酸化p65-NFkBの減少もウエスタンブロット法で確認できた。これらの結果から、GJGは肥満によって誘導された骨格筋の萎縮を抑制する可能性が示唆された。
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