研究課題/領域番号 |
21K07393
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
土橋 智弥 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20828488)
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研究分担者 |
鈴木 崇之 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40816691)
末永 智浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70433365)
垣本 信幸 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90614412)
熊谷 健 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60316114)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヨウ素摂取量 / 母乳中ヨウ素濃度 / 早産児 |
研究実績の概要 |
ヨウ素は人体にとって必須の微量元素であり甲状腺ホルモンの主要な構成要素である.世界的にヨウ素は欠乏状況であり,先進国でも摂取強化が呼びかけられている.本邦は、古くからヨウ素を豊富に含む海藻や魚類を日常的に摂取しており,世界でも珍しいヨウ素充足地域でありヨウ素を豊富に含む海藻類が風味原料(出汁)として様々な料理に多用されることにより,ヨウ素過剰摂取の可能性が推測される. 甲状腺機能の未熟な早産児や新生児においてヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能異常を引き起こすことが知られているが,早産児のヨウ素摂取状況は調べられていない.ま 早産児のヨウ素摂取量,および母乳中ヨウ素濃度は密接に関与していることが予想されるため,早産児の適切なヨウ素摂取量が判明することにより,適切な母乳中ヨウ素濃度を保つ食事形態を指導することも可能とすることが目的である. 該当年度において、母乳中ヨウ素濃度を測定、母乳ヨウ素濃度は約80-200ug/dL程度の値となり、ICP-MS法で測定できることが確認できた。また、尿中ヨウ素濃度に関してもばらつきはあるものの、母児ともに測定できている。一方でヨウ素過剰摂取による甲状腺機能異常症例が少なく、今後も症例を蓄積する必要がある。 早産児にとってヨウ素過剰摂取は甲状腺機能異常を引き起こし,治療が必要となる.本邦はヨウ素過剰摂取になる可能性のある地域だが,早産児のヨウ素摂取状況は不明であり,主要なヨウ素摂取源である母乳と母の食事形態との関係も調べられていない.尿中ヨウ素,母乳中ヨウ素を測定し,ヨウ素の摂取状況が明らかにできた場合,早産児におけるヨウ素耐容上限量を評価することができる.さらに授乳婦の食事形態と比較することにより,適切な母乳中ヨウ素濃度を維持するための食事形態を明示することができ,授乳婦の食習慣の改善を啓発することができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究全体は概ね順調に経過している。登録症例は約30症例と順調である。約15例に関しては尿中ヨウ素濃度の測定、および母乳中ヨウ素濃度測定共に完了している状態である。 しかし、登録した早産児のうち、ヨウ素過剰摂取による甲状腺機能異常を来した症例は1例のみと少なく、ヨウ素摂取量の耐容上限量を求めるためには症例数が不足している。今後も研究を継続、登録症例数を増やす必要がある。 母に行う食事摂取の問診に関してもおおむね回収できており、アンケート回収率は約80%である。 児の栄養方法に関しては、冷凍保存していた搾母乳による栄養や、母乳の栄養を増強する目的で添加母乳を使用している症例、また母の母乳が少なく、人工ミルクのみを使用している症例等栄養方法が多岐に渡っており、各栄養方法によるまとまったデータを採取するためには、更なる患者の登録が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り症例登録を進め、尿中ヨウ素、母乳中ヨウ素濃度の測定を平行して行っていく。 母乳保存に関しては、一般的に-30℃で保存していること、-80℃では一般的な母乳保存容器(母乳パック)の破損が起こったことから、-30℃での保存に変更する。 アンケート内容の理解が難しく解答が得れられない場合があり、アンケートを渡した時点で担当者から作成方法に関して説明することで、回収率の向上を目指す。 異常症例に関して現時点では登録が少なく、今後も症例の蓄積が必要である。 症例が蓄積した時点で比較検討を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
母乳中ヨウ素濃度の測定に1検体あたり約20000円の費用が掛かり、かつ数検体まとめて検査を行うため、検体検査費用が次年度の請求となり、翌年度分として請求する必要がある。
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