研究課題/領域番号 |
21K07400
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
丸岡 秀一郎 日本大学, 医学部, 准教授 (80599358)
|
研究分担者 |
伊藤 亮治 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物応用研究部, 室長 (60425436)
岡山 吉道 日本大学, 医学部, 准教授 (80292605)
権 寧博 日本大学, 医学部, 教授 (80339316)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ヒト化マウス / ヒト脳マスト細胞 / ヒト肺マスト細胞 / 喘息 / ストレス |
研究実績の概要 |
心理社会的ストレス(以降、ストレス)は、気管支喘息(以降、喘息)の病態形成、増悪に関与する環境因子であるが、ヒトの気道局所の免疫細胞群による分子病態の詳細は不明である。本研究の目的は、ヒト免疫細胞を有するヒト化マウスを用いて、これまで解析困難であったヒト免疫環境下のストレス関連喘息の分子病態を明らかにし、診断、治療につながる臨床的意義を見出すことである。 項目(1)「免疫ヒト化マウスを用いたストレス関連喘息モデルでの肺ヒト免疫細胞(マスト細胞、2型自然リンパ球、T細胞など)の役割の検証」については、免疫ヒト化マウスから脳ヒトマスト細胞および肺ヒトマスト細胞を抽出し、細胞培養することに成功した。また、ストレスモデルについて、喘息モデルおよびストレスモデルで比較的安定した反応を示したBALB/cマウスに焦点を絞って実験をすすめた。その結果、拘束ストレス負荷による喘息モデル(卵白アルブミン(抗原)+フラジェリン(アジュバント))は、ストレス負荷のない喘息モデルマウスと比較し、肺胞洗浄液中の好酸球数が増加することが確認できた。 項目(2)「免疫ヒト化マウスを用いた喘息モデルでの脳ヒトマスト細胞の役割の検証」については、現在、喘息モデルから抽出したヒト脳マスト細胞を培養維持できており、機能解析をすすめている。 また、本研究の成果として、ヒト化マウスによる難治性喘息モデル、ヒトマスト細胞、ストレス関連喘息などに関する学会、研究会発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
項目(1)「免疫ヒト化マウスを用いたストレス関連喘息モデルでの肺ヒト免疫細胞(マスト細胞、2型自然リンパ球、T細胞など)の役割の検証」については、免疫ヒト化マウス作製に関して、免疫細胞のヒト化率が低い状態グループの存在と作製にかかる時間の問題は依然あり、十分な頭数の実験ができていない。また、マスト細胞特異的ノックアウトマウスの系統維持が困難となり、新規に繁殖を進めることとなった。そのため、ヒト化マウスにおけるヒトマスト細胞の実験を優先してすすめることとした。 項目(2)「免疫ヒト化マウスを用いた喘息モデルでの脳ヒトマスト細胞の役割の検証」については、免疫ヒト化マウスからの脳および肺からマスト細胞を抽出し、培養を行なったが、予想以上に増殖速度が遅く、十分な細胞数を得ることができなかった。今回、培養条件の検証もできたため、来年度はより効率よく解析ができると考えている。また、肺脳相関の機序を解明するために、脳に存在することが確認できているヒトマスト細胞を中心に行っていくこととした。 項目(3)「ストレス関連喘息の脳肺相関のメカニズムの解析」については、野生型マウスにおいても喘息モデルおよびストレス負荷モデルは個体差がでやすいため、データが安定しなかった。C57BL/6jは断念し、比較的安定的喘息病態およびストレス反応を再現できるBALB/cマウスに絞って研究を進めた。
|
今後の研究の推進方策 |
項目(1)については、ヒト化率が高く維持できる改変マウスを開発した。今後、喘息モデル、ストレスモデルに活用していく。マスト細胞特異的ノックアウトマウスの実験系は断念し、野生型マウスを用いたストレス誘導性喘息モデルにおける脳および肺マスト細胞に焦点を絞って、マウスからマスト細胞を抽出、培養し、遺伝子発現解析および機能解析を進めていく。ストレスと喘息病態における脳および肺マスト細胞の機能への影響を検証していく。 項目(2)(3)については、野生型マウスにおけるストレス関連喘息モデルが確立できたため、免疫ヒト化マウスを用いてストレス誘導性アレルギー性気道炎症を進めていく。免疫ヒト化マウスより脳、肺マスト細胞を抽出し、培養することに成功しているため、本年度はこれらのヒトマスト細胞の遺伝子発現解析、機能解析を進めていく予定である。さらに喘息モデル、ストレス負荷モデルにおけるこれらのヒトマスト細胞への影響についても検証していく。これらの結果から、ストレス関連喘息の肺脳相関のメカニズムをマスト細胞中心に解析し、臨床応用につなげられる成果を上げていきたいと考えている。
|