研究課題
パーキンソン病(PD)は加齢とともに発症率が増加する神経変性疾患の中で、アルツハイマー病に次いで発症頻度の高いものである。超高齢社会を迎える日本のみならず全世界においてPDの患者数が増加しており、その予防及び治療法の開発は喫緊の課題である。近年、消化管に分布する自律神経終末で生成された構造異常alpha-synuclein (Syn)が逆行性に中枢神経に伝播し、PDを惹起するというBraak仮説が脚光を浴びている。異常Synの生成機序には、酸化ストレスによるタンパク質の修飾が関与している可能性が示唆されている。口腔は消化管の中で最も吻側に位置しており、口腔内における炎症は他の消化管におけるそれものよりも、炎症関連分子や酸化修飾をうけた異常タンパク質の血管系および末梢神経からの逆行性輸送により中枢神経変性のリスクをより強く増大させる可能性がある。本研究課題では、「PD患者では腸管内慢性炎症が酸化ストレスを増加させ、疾患発症に関与する」との仮説を口腔に応用し、口腔内炎症のPD発症への関与について検討した。名古屋大学医学部神経内科との共同研究によりPD患者及び対照患者の唾液を採取し解析を行った。口腔炎症の初期段階である歯肉炎において、口腔内酸化ストレスを引き起こすmyeloperoxidase(MPO)の唾液中活性はPD患者では正常対照と比較して有意に増加していることが示され、PDにおける口腔内炎症の存在が確かめられた。口腔内炎症の原因を探索するため、PD患者唾液中の細菌叢について、rRNAを用いた解析を行ったが、疾患特異的な変化は認められなかった。唾液中には熱感受性をもつ新規なMPO活性抑制因子が内在することを見出した。PDにおける口腔内炎症の亢進は、細菌叢の変化ではなく、内因性のMPO活性制御因子による可能性が示唆された。
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Journal of Neural Transmission
巻: in press ページ: in press
10.1007/s00702-023-02730-6
全国歯科衛生士教育協議会雑誌
巻: 28 ページ: 3-6