研究課題/領域番号 |
21K07406
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
中西 司 産業医科大学, 大学病院, 助教 (00772609)
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研究分担者 |
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
塚田 順一 産業医科大学, 大学病院, 准教授 (20227367)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 白血病 / ステロイド 様抗がん剤 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
「薬剤耐性を規定するメカニズム、特に特徴的な分子は何か、またそれをどのように探索するか」というのが、本研究課題の核心的問いであり、特に薬剤耐性を獲得した細胞株での薬剤が直接作用・結合する標的タンパクの解析を行うことを目標としている。 申請者らが今までにステロイド骨格を持つ抗がん剤の影響を報告してきたATL細胞株がMT-1、MT-2、MT-4細胞である。抗がん剤としては、ウリ科の植物に広く含まれ、ステロイド骨格を持つククルビタシンDに着目して、その抗腫瘍効果を報告してきた。MT-1,MT-2、MT-4細胞はその増殖のカギとなるNF-κBを活性化するTAXの発現に違いが見られ、MT-1ではその発現が見られないなど、それぞれに特徴を持つATL細胞株である。これらの細胞を用いて、薬剤耐性ATL細胞株の樹立を試みた。薬剤としては、経験値の高いククルビタシンDを第一選択とした。我々の報告で、ククルビタシンDに対する感受性がこれら3株で異なるため、薬剤耐性誘導に用いるククルビタシンDの濃度もそれぞれのIC50より若干高めの濃度を用いた。対照群の処理にはククルビタシンDの溶媒であるエタノールを用いた。3日間これらの薬剤で処理後、クルビタシンDに対する感受性を調べたところ、既にMT-1、MT-2細胞で薬剤耐性の傾向が認められた。しかしながら、MT-2はもともとのクルビタシンDに対する感受性が低いためか、一度細胞保存液で懸濁し低温保存後に、改めて細胞を培養のために起こしてクルビタシンDに対する感受性を調べたところ、対照群と変わらない傾向が認められたため、耐性株の樹立を再度検討している。加えてMT-4に関しては、樹立の際にククルビタシンDの濃度設定を更に低濃度にする必要があり、現在検討中である。 ククルビタシンDの標的分子に関しては、そのヒントとなる結果を半田ビーズを用いた直接結合法により付着細胞を用いて得ることができた。2022年度にはその詳細を報告できるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らが報告してきたATL細胞株の薬剤耐性ATL細胞株の樹立を試み、MT-1細胞に関しては効率よく樹立できた。しかしながら、他のMT-2、MT-4細胞に対してはその樹立を再度確かめる必要があり、現在検討中ではあるが、薬剤の標的候補も見つかり、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請時には、薬剤耐性細胞株樹立後、薬剤耐性に関与している分子群をマイクロアレイ等で網羅的に解析する計画であった。近年、標的遺伝子群の解析にRNASeq法が用いられるようになり、その価格も一遍している。本年度は対照群細胞株と樹立前細胞株、薬剤耐性細胞株の3群について(解析がかなり煩雑なので、2群も想定し)、RNASeqを行う計画である。その結果と、2021年度にあがった標的分子候補との関連を調べ、更なる分生生物学的なアプローチ(Crisp/Cas9によりノックアウト、siRNA、shRNAによるノックダウンなど)によりそれらの分子の薬剤耐性獲得における役割について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2万円以下の残額であったため、適当な物品購入ができなかったため。
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