研究実績の概要 |
視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD)は中枢神経系自己免疫疾患である.視神経脊髄炎患者血清よりアストロサイトに発現するアクアポリン4水チャネルに対する自己抗体が発見されたことで, NMOSDは自己免疫性アストロサイトパチーとして,多発性硬化症より分離独立している.NMOSD再発予防のために副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤による免疫治療が行われているが,再発を抑制できない症例や治療の副作用に悩んでいる症例が存在する.近年,新たに補体やサイトカインなどを標的とした高い有効性を持つモノクローナル抗体製剤がNMOSDの治療の選択肢として追加された.しかし,個々の患者にたいしどの薬剤が最適であるかを予測するバイオマーカーは存在していないのが現状である.そこで, 細胞間コミュニケーションツールとしての細胞外小胞の臓器特異性に着目して再発および治療反応性に関わる分子マーカーを探索し,視神経脊髄炎関連疾患の個別化医療の確立を目指すことを目的として研究を進めた. 末梢血単核球を刺激した培養上清およびヒト血清よりホスファチジルセリン(PS)アフィニティ法を用いて細胞外小胞を単離した.単離した細胞外小胞を細胞外小胞のマーカー分子であるCD63抗体,CD81 抗体で染色し,フローサイトメトリーでの検出を行った. 細胞外小胞の産生細胞を同定するには至らなかった.一方で,剖検脳を用いて,活動ステージにおける免疫細胞の動態を病理学的に解析した.視神経脊髄炎の初期・早期活動性病変において,細胞外DNAトラップを示唆するシトルリン化ヒストンを持つ活性化好中球,IL-17を産生するT細胞,細胞傷害性顆粒であるグランザイムを発現した組織常在性記憶 T 細胞が集積していることを明らかにした.これらの細胞群は病変拡大に関与していると考えられた.
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