研究課題/領域番号 |
21K07415
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
浅沼 幹人 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (00273970)
|
研究分担者 |
宮崎 育子 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (40335633)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | パーキンソン病 / 腸管先行性神経変性 / 腸管グリア細胞 / 環境毒ロテノン / 腸管細胞環境 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病発症の環境毒であるロテノン曝露による腸管の免疫細胞を含む細胞環境の変化,炎症反応や酸化ストレスと腸管グリア機能不全との関係を検討し,腸管グリア機能不全ひいては腸管先行性神経変性をもたらす機構を明らかにするために,環境毒ロテノン持続皮下投与パーキンソン病モデルマウスの腸管関連リンパ組織(GALT),粘膜下・筋間神経叢における腸管免疫細胞(樹状細胞,細胞障害性/細胞保護性マクロファージ,腸管リンパ球),炎症関連分子,消化管粘膜バリアの細胞組織学的変化を検討した.C57BLマウスへの浸透圧ミニポンプを用いた低用量ロテノン(2.5 mg/kg/day) 4週間慢性皮下投与により,黒質ドパミン神経の変性脱落のみならず,回腸筋間神経叢,アストロサイト様グリア細胞の脱落が認められ,腸管粘膜上皮tight junction (ZO-1)の脆弱化,組織損傷時に核外に移行し細胞外へ放出され炎症惹起に働くdamage-associated molecular patterns (DAMPs)であるHigh mobility group box-1 (HMGB1)の粘膜上皮の核膜管腔側から核外への著明な集積が認められた.また,ロテノン暴露腸管初代培養系において腸管グリア細胞共存下でのみ惹起される腸管神経細胞死が,アストロサイト様グリア細胞での抗酸化分子メタロチオネインの発現を増加させるポリフェノール類により抑制された.これらの結果は,腸管神経障害には腸管粘膜バリア機能の破綻,炎症反応,グリア細胞の機能障害が関与することを示唆している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境毒ロテノン持続皮下投与パーキンソン病モデルマウスの腸管関連リンパ組織,粘膜下・筋間神経叢における腸管免疫細胞,炎症関連分子,消化管粘膜バリアの細胞組織学的変化を検討し,ロテノンの皮下投与であるにもかかわらず,腸管粘膜バリア機能の破綻と粘膜上皮での起炎キーファクターHMGB1の核外管腔側への異常集積がみられるという興味深い結果を得ることができた.この結果は,ロテノン皮下投与による腸管先行性神経変性のメカニズムに関連すると考えられ,次年度はさらに腸管免疫細胞の変化,HMGB1のレセプターTLR4,炎症性サイトカイン,酸化ストレスの指標,抗酸化分子とα-synucleinの発現変化,腸管神経叢の神経障害を経時的に検討する.さらに,ロテノン暴露腸管初代培養系を用いて,パーキンソン病モデルで認められた腸管免疫細胞,炎症関連分子の細胞組織学的変化を検討する.
|
今後の研究の推進方策 |
ロテノン持続皮下投与パーキンソン病モデルマウスを用いて,腸管免疫細胞の変化,HMGB1のレセプターTLR4,炎症性サイトカイン,酸化ストレスの指標,抗酸化分子とα-synucleinの発現変化,腸管神経叢の神経障害を経時的に検討する.また,腸管グリア機能不全および非細胞自律性の神経細胞障害をもたらす分子細胞イベントの同定を試みる.その分子細胞イベントを抗体,阻害薬,siRNAなどで補正,抑制することにより,腸管グリア機能不全と神経細胞障害が軽減あるいは阻止できることを確認する.さらに,見いだした分子細胞イベントを抗体や阻害薬などにより抑制する処置を低用量ロテノン慢性皮下投与パーキンソン病モデルに対して行い,腸管粘膜免疫系分子細胞イベントの補正,抑制による神経保護をめざす.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はロテノンを充填した浸透圧ミニポンプをマウス皮下に埋め込み動物実験を行い,効率よく実験結果を得ることができた.そのため,動物実験に必要とし て計上していた経費の一部にあたる52,324円を次年度に使用することとなった.次年度の請求研究費と合わせて,培養実験,動物実験のための消耗品費として使 用する予定である.
|