研究実績の概要 |
アルツハイマー病の病態を特徴づける病理所見として、神経細胞内の異常リン酸化タウ凝集(タウ病理)とアミロイドβ(Aβ)の細胞外沈着(アミロイド病理)が挙げられる。近年、疾患関連ミクログリア(disease-associated microglia)と呼ばれるミクログリアの特異なサブタイプがRIPK1(receptor interacting protein 1 kinase)依存性に産生され、神経炎症を惹起しアミロイド病理を増悪させることが報告されている。一方、我々はRIPK1の機能を抑制する分子TAK1(transforming growth factor (TGF)-β-activated kinase-1)が、タウ蓄積AD動物モデルで神経炎症に対し保護的に作用する実験結果を得たことから、RIPK1によるアミロイド病理とタウ病理の関連を考えた。 アミロイド蓄積AD動物モデルでは、4か月齢と比較して8か月齢のアミロイド蓄積モデルで大脳皮質および海馬へのアミロイド沈着およびミクログリア活性化が著明であった。ミクログリア特異的にTAK1を除去したマウスでは、ミクログリア活性化が軽減し、アミロイド沈着が有意に抑制されていた。インフラマソームASC, RIPK1の発現は両群で差を認めなかった。TAK1はAβ、タウに対し相反するミクログリア炎症を呈し、TAK1制御に関連するシグナリング経路が背景病理により異なる可能性が考えられた。
|