研究課題/領域番号 |
21K07421
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
岩佐 和夫 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (10345613)
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研究分担者 |
吉川 弘明 金沢大学, 保健管理センター, 教授 (10272981)
古川 裕 金沢大学, 附属病院, 助教 (50881033) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重症筋無力症 / 免疫チェックポイント分子 / 補体制御因子 / 骨格筋 / 新規病態 |
研究実績の概要 |
重症筋無力症(MG)の病態における免疫チェックポイント分子と補体制御因子の関与について明らかにすることを目的としている。 MGの骨格筋における免疫チェックポイント分子の発現亢進を報告してきたが、これに加え補体制御因子(CD59)の発現状況を免疫組織染色、ウェスタンブロット(WB)およびqRT-PCRを用いて、タンパクレベル、mRNAレベルで確認できた。骨格筋標本を用いた免疫組織染色では、CD59が筋膜のみでなく神経筋接合部にクラスター化して発現していることが明らかにされた。また、WBおよびqRT-PCRで骨格筋のCD59の発現量を検討したところ、MGのうち1/3の症例でタンパクおよびmRNAレベルでの発現が亢進していることが示された。さらに、CD59の発現量と臨床症状の重症度と関連があることが明らかとなった(2022年度発表予定)。 これまで、ヒト骨格筋でのCD59の発現は筋膜に一様に発現していると考えられていたが、神経筋接合部にクラスター化して発現することが明らかにされたことは新たな知見となる。さらに、CD59の発現状態とMGの病態との関連が裏付けられたことはMGの新たな病態を解明したことになる。 MGの骨格筋においては、免疫チェックポイント分子のみでなく補体制御因子の発現も亢進しており、これらの因子の発現状態とMGの臨床症状との関連が明らかにされたことから、MG骨格筋においては免疫系に対する抑制作用に加え、骨格筋自体に防御機構が備わっていると考えられる。これらの病態制御機構の解明は、MGの新たな病態の理解とともに新規治療法の開発につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者骨格筋検体を用いた研究を先行して行った。MG骨格筋による病態制御機構については、Lazardis Kら(Front Neurol. 2020)においても報告され徐々に注目を集めてきている。本研究では、MG骨格筋におけるPD-L1、CD59の発現亢進を明らかにした。これらのデータは今後の研究推進において基盤となるデータであり、MGの新規病態の解明において重要なデータとなる。 培養細胞の入手と培養条件設定のための消耗品等の入手に遅延が生じたが、全体としての進捗は概ね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
MG骨格筋によるCD59発現に関する研究成果を学会で発表するとともに論文として報告する。 MG骨格筋におけるPD-L1、CD59の発現亢進が明らかとなったことから、この発現を調整しているメカニズムの解明が今後のテーマとなる。今後、骨格筋培養細胞を用いた研究で免疫チェックポイント分子および補体制御因子発現のメカニズムを解明していく予定である。また、MG骨格筋における発現のみでなく、可溶化PD-L1および可溶化CD59因子の病態への関与も検討していく予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大のため共同研究施設への立ち入りに制限が生じとともに、消耗品・培養細胞の納品に遅延が生じた。また、県外への移動制限も学内内規により発令されたため、令和3年度における学会の出席も控えた。このため、研究計画の一部を次年度に変更し、また、研究発表を次年度以降に延期した。 学会出張費、論文発表に関する費用、令和3年度に購入が遅延した培養細胞や消耗品の購入が優先される。また、WB用の各種抗体やqRT-PCR試薬の購入を予定している。
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