研究課題/領域番号 |
21K07424
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
波田野 琢 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60338390)
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研究分担者 |
上野 真一 順天堂大学, 医学部, 特任助教 (40875944)
奥住 文美 順天堂大学, 医学部, 助教 (90826075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 多系統萎縮症 / シヌクレイノパチー / α-シヌクレイン |
研究実績の概要 |
パーキンソン病および多系統萎縮症はα-シヌクレインの異常蓄積が原因となるため、シヌクレイノパチーと呼ばれる。中枢神経のみならず、全身の末梢神経にも蓄積を認めることから全身にα-シヌクレインの凝集が引き起こされることが予想される。α-シヌクレインの凝集はβシート構造をとる異常凝集型になると正常構造を異常構造へ変換し凝集の連鎖が生じることが重要であると考えられている。この凝集を引き起こす原因となる凝集型α-シヌクレインをシードと定義し、このシードをRT-QuIC法を用いて血液から検出されることを見出し、本研究を立案した。R3年度はRT-QuICにより得られたα-シヌクレインシードを電子顕微鏡で詳細に観察し、病型により構造が異なることを確認した。多系統萎縮症ではα-シヌクレイン繊維の太さがパーキンソン病と比較してより太いことを確認した。さらに、GFP-A53T変異型α-シヌクレインを安定発現する細胞にこのシードを導入するとα-シヌクレインの凝集体を形成するが、この形状についても病型によって異なっていた。具体的には多系統萎縮症患者から得られたα-シヌクレインシードを導入するとパーキンソン病のものと比較してより密度の高い凝集体を形成していた。そして、電子顕微鏡と細胞アッセイとを用いることで、感度・特異度高く多系統萎縮症とパーキンソン病を鑑別できることを確認した。また、患者剖検組織についてα-シヌクレインシードを探索したところ全身臓器から検出できることを明らかにした。パラビオーシスモデルの作成に成功し、血液浄化モデルになりうることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RT-QuIC法による血清αシヌクレインのシード検出により、シヌクレイノパチーの鑑別が可能であることを証明した。さらに、細胞アッセイと電子顕微鏡で凝集体の構造を詳細に解析することで、パーキンソン病、レヴィ小体型認知症、多系統萎縮症の鑑別も可能であることを明らかにした。これらについては現在論文投稿準備中である。全身剖検組織についてはパーキンソン病と正常対象の症例からRT-QuICにより解析を行い、全身に凝集型α-シヌクレインが認められることを同定した。パラビオーシスマウスの作成に成功し、シヌクレインシードの分布の詳細な解析をする準備が整っている。以上より、本研究の進捗は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
血清より鑑別可能であることについて論文としてまとめる。また、血清α-シヌクレインの凝集速度などRT-QuIC測定の際に得られる各種パラメーターと他のバイオマーカーとの関連について検討し、病的意義についても解析をすすめる。剖検組織については症例を増やして検討を行う。パラビオーシスマウスの検討についてはαシヌクレインの凝集についてモニタリングを行い、血漿交換の有用性を引き続き検討する。血漿交換療法については、マウスから得られたデータを基に、臨床研究の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
器具や消耗品については既存のものを活用することで今年度の支出を計画より低く抑えることができた。来年度はパラビオーシスマウスモデルの飼育代と解析代として活用する。
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