研究実績の概要 |
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は常染色体優性遺伝の筋疾患で、筋細胞の壊死と自己免疫疾患にも似た炎症所見を特徴とする。FSHD患者の筋肉では、健 常者には発現していない転写因子DUX4-flが発現しており、このDUX4-flの異所的な発現がFSHDの原因と考えられている。我々はDUX4-flが遺伝子領域以外にも 「非コードDNA」である様々な反復配列(ERV, サテライトDNA, LINE, Alu, MaLR等)からの転写を誘導していることを明らかにしてきた。しかし、その完全長配 列の同定には至っておらず、それら反復配列の発現と疾患との関係もまだ明らかになっていない。そこで本研究ではDUX4-flにより発現誘導される非コードDNAを 完全に明らかにし、FSHD病態との関連を探ることを目的としている。令和4年度はDUX4-fl, DUX4-s発現細胞におけるdsRNAの存在頻度を免疫染色によって調べた。また、dsRNAに対する細胞内応答系の1つであるPKRの活性化についてウェスタンブロットで検討した。dsRNAの形成を阻害するためのGapmerをデザインし合成した。また、非コードDNAからの転写産物が翻訳されている可能性を探るため、DUX4-fl, DUX4-s発現細胞のRNAを用いてRibosomel profilingをおこなった。これまでにおこなったロングリードRNA-seqのデータとRibosome profilingのデータを合わせて解析し、翻訳された場合の機能ドメインの検索などをデータベース解析した。
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