研究課題/領域番号 |
21K07429
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
八木田 佳樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (20403066)
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研究分担者 |
大山 直紀 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (90622895)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / 頭蓋内動脈狭窄 / プラーク性状 |
研究実績の概要 |
本研究では脳主幹動脈狭窄を原因とする脳梗塞急性期における狭窄部プラークの不安定性と治療効果による安定化を評価する手法として、3次元高解像度造影MRIを用いたvessel wall imaging (VWI)の有用性を確立するのが目的である。 まずこれまでにVWIを実施した症例を対象として、その検査結果の定性・定量評価法の妥当性について評価し、再現性良好であることを確認した。次に脳主幹動脈狭窄を原因とする脳梗塞急性期にVWIを実施した20例を対象として検討を行い、急性期には全例でVWI陽性であることを明らかにした。このうち非再発例でVWI再検を行った11例で初回と2回目造影効果比を比較した結果、6例でプラーク安定化がみられた。脳梗塞再発時にVWIを再検した例は3例あり、いずれも初回より造影効果比が増強していた。この結果よりVWIが頭蓋内動脈狭窄病変のプラーク安定化、治療効果判定に有用であることが示唆された(第65回日本脳循環代謝学会総会、第48回日本脳卒中学会学術集会)。 これらの結果をもとに、プラーク不安定性と関連する因子を明らかにするための前向き研究では、対象患者登録を行っており、現在37例の登録と血清サンプルの取得を完了している。プラーク不安定性が持続することと関連する因子として、血管内皮機能障害、炎症、脂質プロファイルの異常を想定してバイオマーカー候補を挙げている。これらの測定をELISAで行うための、ELISAキット購入、研究補助員の雇用を行い、測定を開始している。このような急性期と慢性期のMRI検査結果の比較研究は、MRI検査を日常臨床で比較的容易に行いうるわが国でこそ遂行しうる研究である。またその結果と関連するバイオマーカーを明らかにすることは、有用かつ国際的に評価されるうる成果が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当施設におけるVWI定性・定量評価の妥当性が示され、後ろ向き研究によりVWI所見は脳梗塞発症時には全例で造影効果陽性となり、治療介入により比較的短期間にそれが減弱する症例が過半数であることを示すデータを得ている。これはVWIが脳梗塞発症後の頭蓋内動脈狭窄部のプラーク不安定性と治療効果判定に有用であることを示唆する結果である。前向き研究では中間解析のため、ELISAによるプラーク不安定性と関連するバイオマーカーの測定を開始している。VWIの変化が想定よりも大きかったため、予定より少ない症例数で結果を出すことが可能と考えられる。以上のことからおおむね順調に経過しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前向き研究の登録をさらに進めていく。また中間解析のためにプラーク不安定性と関連しうる候補バイオマーカーの測定を開始している。ELISAを担当する実験補助員の雇用を行っており、今年度分に加えて昨年から繰り越した研究費をこれにあてている。得られたバイオマーカーの測定データとプラーク不安定性が持続することとの関連を解析していく。これまでに得られた結果からは、プラーク安定化が半数の症例でみられており、プラーク安定化群と非安定化群の比較が統計学的な妥当性をもって行えるものと考えられる。 症例蓄積ペースは当初想定したよりもやや遅くなっている。脳梗塞急性期症例の発生数に依存するため、登録促進は容易ではない。しかし当初想定していたよりもVWI所見の経時変化が大きく、短期間にプラーク安定化を示す症例が多いことが示されたことから、当初の予定症例数に達しなくても結論が得られるのではないかと期待できる。 本研究では当科退院後の脳梗塞再発や日常生活動作の推移も評価項目である。このような予後の追跡は外来通院がある場合は当科外来にて行っている。通院がない例では当院倫理員会の承認を得たうえで手紙による調査を行っている。これらの研究業務は現時点において滞りなく進捗している。今後も現在の研究体制を維持できるよう努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベース構築などのため研究補助員の雇用を予定していたが、この業務については順調に進捗したため、雇用を行わなかった。このため次年度使用額が生じた。今年度は検体処理、ELISA測定などのために研究補助員を雇用しており、そのための資金が必要となる。またELISAに関する試薬購入費も必要であるため、今年度請求分と合わせてこれらに充てる予定である。
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