本研究ではこれまでに、頭蓋内動脈狭窄(intracranial artery stenosis: ICAS)を原因とする脳梗塞急性期における狭窄部プラークの不安定性について3次元高解像度造影MRIを用いたvessel wall imaging (VWI)で評価しうること、VWIの造影効果は脳梗塞急性期治療介入により早期に軽減されるうることを後ろ向き研究で示してきた。最終年度はVWIをサロゲートマーカーとして、プラーク安定化に寄与する因子について明らかにすることを目的に前向き研究を進めた。 2020年11月から2023年9月までに当科に入院したICASを原因とする急性期脳梗塞症例を前向きに登録した。VWIは急性期入院中と発症3か月後に実施した。プラークの不安定性を示す造影効果比が25%以上低下した例を改善群と定義し、関連する因子の検討を行った。解析対象とした20例中、14例(70%)でプラーク安定化がみられた。改善群では非改善群に比し、年齢が若い傾向にあった。また脳梗塞を発症時に抗血小板療法を行っていた例は、改善群では0例であったが非改善群では6例中2例(33.3%)あった。入院時のLDL-C、LOX-1、IL-6、血管内皮機能障害マーカーであるAPP770は改善群と非改善群の比較ではいずれも有意差はなかった。一方、VWI再検時のLDL-Cが70mg/dL未満を達成していた7例は全例が改善群であり、非改善群は0例であった。LDL-C100mg/dL未満を達成していたのは20例中17例であり、非改善群6例中5例(83.3%)が含まれていた。ICASの不安定プラークは強力な脂質低下療法で早期に安定化する可能性があり、安定化の指標としてVWIが有用であることが示唆された。
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