研究課題/領域番号 |
21K07430
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
本村 政勝 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (70244093)
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研究分担者 |
松尾 秀徳 独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター(臨床研究部), 医歯(薬)学総合研究科, 教授(移行) (20380975)
吉村 俊祐 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70746635)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アミノ酸固定化 カラム / 病原性自己抗体 / 神経筋接合部 / 重症筋無力症 / ランバート・イートン筋無力症候群 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アミノ酸を固定化したアガロース担体カラムを作成し、アミノ酸固定化カラムがどのような機序で免疫グロブリン(Ig)を吸着するかを解明する。 方法は、20種類のアミノ酸をアガロース担体カラムに固定化し、健常者の血清を用いて、アフィニティークロマトグラフィー法でIgの吸着・溶出実験を行った。その結果、トリプトファン固定化(Trp)カラムのIgG吸着量(mg)の平均±標準偏差は6.90±1.01 mg、残りすべてアミノ酸固定化カラムのIgG吸着量(mg)の平均は2.00mg以下であった。対応のある分散分析とANOVA後の事後検定で、Trpカラムと他のアミノ酸カラムとのペアの多くでp <0.0001の統計的有意性が示された。次に,グリシン(Gly)、フェニルアラニ(Phe)、Trp、及び、Protein Aで固定化1mlカラムを作成して,健常者の血清(n=3)で溶出実験を行った。その結果、血清5ml(IgG総量約50mg)から、Protein Aカラムの溶出量の平均±標準偏差は24.17±0.70mg,Trpカラムでは18.31±0.50mgの順で、IgGが溶出された。免疫電気泳動法(n=3)では,Trp溶出液でProein A溶出液より薄いIgG, IgA, IgMが検出され,他の夾雑タンパク質は検出されなかった。これらの結果より、Trp固定化カラムは、Protein A固定化カラムが血清から精製できる最大結合IgG量の約75%の収率で,IgGを精製できることが示された。考察では、これら結果は、これまでの臨床で使用されているTrp固定化カラム(イムソーバTR)の有用性を強く支持する結果と思われる。以上より、Trp固定化カラムの吸着機序は、Protein A/Gカラムと類似で、免疫グロブリンの吸着によることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、上記の実験結果をまとめて、論文作成中である。この論文は、基礎医学の分野の雑誌に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年は,本研究の最終年である。予定では、重症筋無力症の病原性自己抗体であるアセチルコリン受容体(AChR)抗体と筋特異性受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体、及び、ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)のP/Q型電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)抗体などの各種病原性自己抗体を有する検体を用いて、今回のアミノ酸固定化カラムの吸着能を評価する。さらに実際の臨床現場で使用されているポリビニールアルコール担体のTrp固定化カラム、イムソーバTRと患者検体を用いた実験を予定している。昨年度に,長崎大学病院の倫理委員会にこの研究を承認して戴き,旭化成メディカル株式会社からイムソーバTR(TR-350)とイムソーバ(PH-350)を提供して戴いた。これからの1年間で,TR-350と病原性自己抗体の実験を行い,それらの結果で論文にしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が一段落し、論文を書いており、実験に必要な抗体などの購入が減ったため。最終年度は、共同研究者と密に連絡を取り、実験に必要な消耗品を計画的に購入する予定である。
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