研究課題
本研究では脊髄小脳失調症31型(SCA31)の病態を明らかにすることを最終目的として、代表研究者が開発したモデルマウスにおける異常遺伝子および異常タンパクを解明することである。モデルマウスは、患者の遺伝子異常を有する染色体領域を完全に包含するBAC (bacterial artificial chromosome)をマウスに導入して作製したBAC transgenic mouseであり、高齢になると歩行障害出現するなどの神経障害がみられるモデルマウスである。このモデルマウスにおいて、初年度は歩行などの行動異常が出現する時期における複数の個体から、sacrifice後に小脳を取り出し、RNAを抽出した。併行して同年齢の野生型で遺伝的背景が同じマウスからも同様に小脳を取り出してRNAを抽出した。これらの2種類のRNAを150base-pairのpair-end法でRNA-seqを行い、初年度までにその結果を得た。そのうえで、プルキンエ細胞に特異的に発現する遺伝子に関しての遺伝子発現の変動を検索している。その結果、いくつかのRNAにおいて発現変動を認めた。また、タンパクに関しては、当初予定したプルキンエ細胞特異的なmRNAをenrichするマウスとの掛け合わせが困難であったため、我々が有するBAC TgマウスのRNA-seq解析から得られたデータをもとに異常RNAに対応する蛋白を検索することに方針を変換し、研究を進めることとした。これまでの成果としては、同モデルマウスにおける歩行異常を捉えることができ、その時期を明らかにしたうえで、その時期のマウス小脳に発現するいくつかのRNAにおいて発現変動を認めた点が挙げられる。最終的には異常発現RNAを検索しつくし、定量的RT-PCR法などで異常変動を確認する。そのうえで、それらについて可能な分子についてはタンパクレベルでも検証する。
2: おおむね順調に進展している
RNA発現異常が初めて明らかになった所見があり、おおむね順調に成果を上げていると考えられる。
2年目は初年度に引き続きRNAの異常発現を明らかにし、そのうえでRT-PCR法などで検証実験を行う。検証できたものの内、タンパクレベルでの検証を行い、SCA31に関する病態として論文誌上発表などへと進める計画である。
次年度においてマウスの飼育費用や研究解析費用が、当初お予定より多く見積もる必要が生じたため。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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