研究課題/領域番号 |
21K07436
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松股 美穂 (酒寄美穂) 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (50595460)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カレハ島 / 意欲 / アンヘドニア / うつ病 / 嗅結節 / 側坐核 |
研究実績の概要 |
2021年度は、1)カレハ島(Islands of Calleja; ICj)に対して、人為的操作を加えるためのマウスライン(ICj活性化マウス(D3Cre;ChR2-EYFP)及び抑制マウス(D3Cre;Arch-EGFP))を確立し、それらを光刺激するためのオプティックカニューラの設置手術を行った。また、2)ICjの活動に同期して可視化シグナルが変動するマウスライン(D3Cre;GCaMP3)を確立し、このマウスを用いて急性脳スライスを作成することでICjの活動を経時的空間的に把握する系を確立した。さらに、3)ICjの細胞集団としてのプロパティーを同定する目的および活動したICj神経細胞の検出を目指して、組織学的解析を行なった。 1)については現在行動実験評価中であり、基本的な行動バッテリーテストに加えて本研究で目指している「意欲」や「喜び」に関わる行動実験を行なっている。2)については、ICj神経細胞集団の群内で発火パターンの違いなどを検出しようとしているところである。また3)の神経細胞プロパティーとの関連性も合わせ同定を試みている最中である。さらに活動した神経細胞を検出するために、いくつかの最初期遺伝子の候補のなかから最適なものを決定しようとしている。 以上のように本年度で、本研究を遂行するために必要な準備が概ね終了できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画していた光遺伝学操作マウスを用いた行動については、マウスラインの確立、実験系の最適化、光刺激の条件検討、活性化神経細胞の検出など、必要な道具や技術は全て揃えることができ、今後は遂行のみとなっている。 また一方で、ICjの活動をカルシウムイメージングの手法で経時的空間的に把握する系についても手法や解析方法の獲得や準備などはほぼ完了し、今後はイメージングデータの解析と組織学的解析を同時に進行させていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①ICjの光遺伝学操作マウスを用いた行動実験とその評価を行う。またその後に最初期遺伝子マッピングを行い、ICj神経細胞の組織学的解析を行う。 ②急性脳スライスとカルシウムイメージングを用いたICj神経細胞群の発火パターンの経時的空間的解析を行う。また組織学的解析を併せて行うことでICj神経細胞群の詳細なプロパティーを決定する。 ③①、②を踏まえて、本研究で目指している「意欲」や「喜び」に関わる行動に関与するICj神経細胞群の、神経活動の経時的空間的伝播の様子を捉える。さらに、順行・逆行性ラベリング手法を加えて、投射元・投射先も踏まえた回路としての働きを探る。 ④上記を踏まえて、本研究計画で想定していたICjによる直接的間接的な側坐核の制御機構について洞察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。 次年度の研究費は、実験に用いる動物飼育、ウイルスベクターの作成や入手、光遺伝学解析備品などの消耗品購入の経費に使用する予定である。また学会発表のための旅費、論文投稿料、英文校閲費も使用予定である。
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