研究実績の概要 |
2023年度は、カレハ島(Islands of Calleja; ICj)に対して、光刺激で活動を操作するためのマウスライン(ICj活性化マウス(D3cre;ChR2-eYFP)及び抑制マウス(D3cre;Arch-eGFP))を用いて、前年度に引き続き実験を行った。光刺激を行うためのオプティックカニューラの設置手術を行い、解析した。不安行動に関してはいくつかの実験を試みたが、刺激群と対照群で差異は認められなかった。社会的相互作用については、活性化時に相互作用の低下が見られた。条件付け場所嗜好性/嫌悪性試験では、活性化マウスで嗜好性が認められたが、抑制マウスは嫌悪性を示さなかったため、単純にICjの活性化と抑制が逆向きの行動を引き起こすわけではないと推察された。また脳内自己刺激反応を用いた実験によって、ICj活性化による意欲惹起効果が観察されたが、その効果は時間経過(秒/時間/日単位)により変化し画一的な結果は得られず、さらなる詳細な解析が必要と考えられた。現在もこれらの行動実験及び解析を継続している。 また、ICjの組織学的解析によるプロパティーの検討を行った。近年報告されたが、GABA作動性抑制細胞が密集しているGranular areaと、その神経軸索が伸長・神経支配しているとされるHilar areaを分け、それぞれについて、側座核での報告を参照して解析を行った。Granular areaはほとんどが均一な小型のGABA作動性抑制細胞が占めており、一方でHilar areaには中型、大型の細胞が疎に存在していた。これらをいくつかの神経細胞マーカーで染色し、現在その局在を見ることで各種神経細胞の割合を得ているところである。 現在は、得られた組織学的知見と行動実験による知見をつなぐ、分子的メカニズムの解明を目指してin vivo, in vitroの実験を行っている。
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