研究課題
ギラン・バレー症候群(GBS)では、酸性糖脂質であるガングリオシドが自己抗体の標的分子として同定され、本抗体が神経症候の発現に関与すると想定されている。GT1aガングリオシドはGBSにおける球麻痺の標的分子と想定されているが、GBS臨床亜型であるフィッシャー症候群(FS)ではほとんどの症例でGT1a抗体が検出されるのに対し、球麻痺をきたすことは稀である。したがって下位脳神経にGT1aを遮蔽する糖脂質の存在が予想される。29種の複合脂質を対象に、GBSやFSの患者血清をプローブとして用いたスクリーニングにおいて、GD2がGT1a抗体活性を大幅に低下させることが分かった。しかし、GD2によるGT1a抗体遮蔽率は球麻痺の有無とは関連は見られず、作業仮説「下位脳神経で何らかの糖脂質がGT1aを遮蔽していることでFSでは球麻痺をきたしにくい」は立証できなかった。以上の結果を受けて最終年度は、下位脳神経でGT1aと複合体を形成することで新しい球麻痺のエピトープを作り出す糖脂質が存在するか検索を行った。プローブとして、GT1a抗体陽性かつ球麻痺を主徴とするGBS 3例(いずれも咽頭頸部上腕型GBS)の血清を用いた。GT1aに複合脂質29種をそれぞれ混合してGT1a/糖脂質複合体を作成し、このGT1a/糖脂質複合体に対するIgG抗体をELISAで測定することで、GT1a単独抗体と比べて活性の増加する糖脂質を検索した。その結果、三つの糖脂質(GT1b・GM3・GD3)がGT1a抗体活性を大幅に増加させることが明らかになった。以上のことから、GBSにおける球麻痺の発現において、GT1aを遮蔽する糖脂質よりもGT1aと複合体を形成し新しいエピトープを作り出す糖脂質が重要であることが明らかとなった。当初の作業仮説を立証するに至らなかったが、新しい病態解明の道筋を示すことができた。
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