研究課題/領域番号 |
21K07438
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松瀬 大 九州大学, 医学研究院, 助教 (70596395)
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研究分担者 |
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00701830)
真崎 勝久 九州大学, 大学病院, 講師 (90612903)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多系統萎縮 / αシヌクレイン / オリゴデンドログリア / ミクログリア / モデルマウス / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
私たちはtet-offシステムを利用し、オリゴデンドログリア特異的にヒト変異α-SynucleinA53Tを任意の時期に発現する多系統萎縮症(MSA)モデルマウスを作成しており、髄鞘完成後の成熟期以降に発現させると小脳失調を主徴とするMSA-C様病態に移行する。本モデルではarginase-1陽性ミクログリアの顕著な活性化、TLR2の発現増加、コネキシン(Cx)群の広汎な脱落をすでに確認している。また本モデルの発病後に、αSynの発現を停止すると症状は回復し、一方でCSF1R阻害薬にてミクログリアの一部を除去すると、運動症状、組織学的所見はむしろ悪化することが分かった。CSF1R阻害薬使用群と非使用群のマウスからCd11b陽性ミクログリアをMagnetic cell sorting法にてsortし、single cell RNA sequencingを行って解析を行った。その結果、特定のサブグループのミクログリアに明らかな変化がみられることが分かった。そのうちの一つとして、CSF1R阻害薬使用群に増加を認めたサブグループに、TLR2などの発現の高い細胞群を認めた。組織学的評価からも、本モデルマウスの病態悪化に関連が示唆され、解析を進めている。一方で、本モデル動物においてヒト変異α-SynucleinA53Tを発現させ、発症直後に発現を停止させると、機能的にも病理学的にもほぼ正常コントロールと近いレベルまで改善することが分かった。一方で発症約1か月後にヒト変異α-SynucleinA53T発現を停止させた場合は、機能的、病理学的改善は部分的にとどまり、残存することが分かった。今後α-Synuclein除去薬を発症直後に使用する実験を進めていく。一方で、ヒト末梢血、髄液についてもサンプルの採取を進めており、今後の解析につなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CSF1R阻害薬使用群と非使用群のマウスからCd11b陽性ミクログリアをsortし、解析、比較することが今年度の大きな目標であったが、おおむね想定したレベルの解析を終了することができた。また、α-Synuclein除去治療のほうも進めていくことができている。ヒトサンプルの採取も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本モデルマウスに対するα-Synuclein除去治療のほうを進めていき、治療効果の判定を機能的、病理学的に進めていく。また、single cell RNA sequencingで見出された結果のうち、治療標的分子の選定を引き続き進めていき、病態との関与について、本モデルマウスのみならず、ヒト病理サンプルの解析も行い、標的分子としての妥当性を吟味し、新規治療ターゲットの検索をすすめる。ヒトサンプルの採取も順調に進んでいるため、引き続き採取を進めるとともに、高感度デジタルELISAにて解析を行い、MSAバイオマーカーの検索をすすめていく。
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