研究課題
私たちはtet-offシステムを利用し、オリゴデンドログリア特異的にヒト変異α-synucleinA53Tを任意の時期に発現する多系統萎縮症(MSA)モデルマウスを作成しており、髄鞘完成後の成熟期以降に発現させると小脳失調を主徴とするMSA-C様病態に移行する。本モデルではarginase-1陽性ミクログリアの顕著な活性化、TLR2の発現増加、コネキシン(Cx)群の広汎な脱落をすでに確認している。また、本モデル動物においてヒト変異α-SynucleinA53Tを発現させ、発症直後に発現を停止させると、機能的にも病理学的にもほぼ正常コントロールと近いレベルまで改善することが分かった。一方で発症約1か月後にヒト変異α-SynucleinA53T発現を停止させた場合は、機能的、病理学的改善は部分的にとどまり、残存することが分かった。一方でCSF1R阻害薬にてミクログリアの一部を除去すると、運動症状、組織学的所見はむしろ悪化することが分かった。CSF1R阻害薬使用群と非使用群のマウスからCd11b陽性ミクログリアをMagnetic cell sorting法にてsortし、single cell RNA sequencingを行って解析を行った。その結果、特定のサブグループのミクログリアに明らかな変化がみられることが分かった。そのうちの一つとして、CSF1R阻害薬使用群に増加を認めたサブグループに、TLR2などの発現の高い細胞群を認めた。本細胞群が多系統萎縮症の病態悪化に関与していると考え、本モデルマウスの解析に加え、ヒト病理についても解析を進めている。また、α-Synuclein除去治療も行い、発症前投与では有効性を見出した。またα-Synucleinのオリゴマーは発症前に発現がピークとなるのに対し、リン酸化α-Synucleinは病期の進行とともに徐々に蓄積することが分かった。
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