研究課題/領域番号 |
21K07440
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
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研究分担者 |
土井 宏 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10326035)
竹内 英之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30362213)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CANVAS / RNA foci / RAN translation |
研究実績の概要 |
我々は、本研究を通じ、RFC1遺伝子のイントロン領域のリピート異常に起因するCerebellar ataxia, neuropathy, vestibular areflexia syndrome(CANVAS)の病態解明をめざしている。本年度は、CANVASの原因となる病的リピート(AAGGG)n, (ACAGG)n、非病的リピート(AAAAG)nを含むベクターの作成と、これらを発現させた培養細胞におけるRNA fociの形成を確認することを目的とした。異常伸長リピートは通常のPCR法では検出困難であるが、申請者らは条件検討を重ねた結果、160リピートのAAGGG (CCCTT)160 、260リピートのACAGG (CCTGT)260、9リピートのAAAAG (CTTTT)9を含むベクターの構築に成功した。そして、これらをNeuo2A細胞に発現させ、(AAGGG)5-locked nucleic acid (LNA)プローブ、(ACAGG)5-LNAプローブを用いて、fluorescent in situ hybridization (FISH) 法を施行した。その結果、(ACAGG)5-LNAプローブにより(CCTGT)260発現細胞において核周囲のRNA foci形成を確認した。同様に(AAGGG)5-LNAプローブは特異的に(CCCTT)160発現細胞のRNA fociを同定した。また、各々のプローブがcross reactivityを示さないことも確認した。両プローブとも、非病的リピートである(CTTTT)9発現細胞においてはRNA fociは見られなかった。また、RNA fociはRNase A処理で見られなくなったことより、これらの封入体がRNAで構成されていることが確認された。これらの結果は、CANVASの病態にRNA凝集によるRNA毒性が関与していることを示唆するものであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RFC1遺伝子の(AAGGG)n, (ACAGG)nの異常リピート伸長を導入したベクター作成には困難が予想されたが、順調にベクター構築に成功し、培養細胞系においてRNA fociを確認することができた。また、今後の研究の質を決定づけるCANVAS剖検例を入手することができたことは非常に大きな収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果により、AAGGGおよびACAGG リピートの異常伸長が、RNA fociを形成することを確認できたことより、疾患リピートの異常伸長は、RNA結合タンパク質との結合に影響を及ぼしている可能性が考えられる。そこで、Neuro2A細胞に本年度作成した(AAGGG)160, (ACAGG)260または(AAAAG)9を発現させ、(AAGGG)n、(ACAGG)nまたは(AAAAG)nのセンス、アンチセンスのビオチン化合成RNAとNeuro2A細胞核抽出液をインキュベートし、UV cross link後にRNA-タンパク質複合体を、ストレプトアビジンセファロースを用いて回収、質量解析で異常リピートに特異的に結合するタンパク質を同定する。また、CANVASの5塩基リピートはグアニンに富むことからG-quadruplex構造をとり、repeat-associated non-AUG translation (RANT)によりペンタペプチドリピートタンパク質(PPRs)が産生されると我々は予想している。RANTにより(AAGGG)nからセンス方向、アンチセンス方向で(KGREG)n、(PFPSL)n、(ACAGG)nから(TGQDR)n、(CPVLS)nというPPRsが産出されることが理論上想定されるが、それらが実際に産生されるのか、産生された場合PPRsの種類によって毒性に差があるのかなどRANTが疾患に関与する可能性を明らかにする。 我々は本年度、ACAGGリピートの伸長を有するCANVAS症例の剖検例を入手することができた。この組織を用い、一般病理学的解析とともに、RNA foci形成の有無、PPRs産生の有無を検証したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
113,747円の次年度使用額が生じたが、これは新型コロナ感染症の影響で、各種学会がオンライン開催となり、旅費の使用がなかったことに起因している。次年度は質量解析などの実施を予定しているので、次年度使用額をその経費の一部に充てる予定である。
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