研究実績の概要 |
本研究の目的はヒト脳梗塞急性期における自然リンパ球MAIT細胞の末梢血の動態からその機能と役割を明らかにし, MAIT細胞制御をターゲットとした新たな治療戦略を構築するものである. 本報告書提出時に,コントロール30例,軽症例30例,重症例25例を登録し, 解析した. 脳梗塞急性期(3日目)の末梢血MAIT細胞の比率は重症群において著しく減少していた [MAIT細胞/Tリンパ球: コントロール群 0.316% (0.191-1.095), 軽症群 0.356% (0.157-0.907),重症群 0.097% (0.068-0.147): P<0.0001]. 重症群のMAIT細胞比率は経時的に回復し, 17日目は有意に上昇していた[3日 0.097% (0.068-0.147) vs. 17日 0.152% (0.118-0.369): p=0.0092]. 一方その他の自然リンパ球のγδT細胞やiNKT細胞では有意な差は認めなかった. 重症群は, コントロール群に比し早期よりCD69陽性のMAIT細胞が有意に上昇し, 炎症性サイトカインIL-17産生能が有意に上昇していた. 一方, 軽症例では有意な変化は認めなかった. 発症3日目のMAIT細胞比率は, 3ヶ月後の機能予後modified Rankin Scale (mRS)と負の相関を示した (P=0.0070). 一方10日目, 17日目の各細胞比率と予後に相関は認めなかった. 以上より発症3日目の早期のMAIT細胞比率は予後不良の指標となり得ると考えた. 今回の解析から重症の脳梗塞では末梢血MAIT細胞が早期より変動し, 炎症性サイトカイン産生能が亢進し, 脳梗塞急性期の病態に強く反映していることが分かった. また発症早期の末梢血MAIT細胞は脳梗塞予後を予測する有意なマーカーとなることが示唆された.
|