研究課題/領域番号 |
21K07444
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
常深 泰司 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (50401344)
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研究分担者 |
赤松 和土 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (60338184)
竹下 幸男 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70749829)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / アルファシヌクレイン / 血管脳関門 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
シヌクレイノパチーはα-シヌクレイン(a-syn)の異常凝集を特徴とする疾患群であるが、中でもパーキンソン病(PD)やレヴィ小体型認知症では末梢組織に蓄積したα-シヌクレイン(a-syn)が脳内に移行し異常構造体がシードとなり伝播することが有力視されている。その移行経路として当初有力視されていた自律神経の軸索を経た輸送は、動物実験の結果、脳幹までしか広がらず限定的と判明した。一方、PD患者の剖検脳や動物実験から、PDにおいて血液脳関門(BBB)の破綻が報告されており、ここを介して液性因子による伝播の可能性も考えられる。これから、申請者らは末梢組織に蓄積したシードがBBBを介して脳内に侵入する経路を仮説した。この仮説の実証とPDの重要な背景因子である遺伝子の影響を解明するためにはヒトiPS細胞を用いたBBBモデル(iPSC-derived BBB; iBBB)の構築が必須と考えた。2021年度は健常人とSNCA A53T変異を有するPD患者のiPS細胞からプロトコールに則りBBB構成細胞である血管内皮細胞、壁細胞、星状細胞への分化を行なった。各々の細胞への分化は免疫染色にて確認した。さらに機能解析を行い、血管内皮細胞は、サイズ依存性の透過性、選択的透過性及びエンドサイトーシス機能を有していた。これらの3種類の細胞を共培養して作成したiBBBも同様の機能を保持していることを確認し、これまでの不死化細胞を用いたBBBの細胞モデルと同等のモデルをヒトiPS細胞を用いて作成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人とSNCA A53T変異を有するPD患者のiPS細胞からBBB構成細胞である血管内皮細胞、壁細胞、星状細胞への分化を行った。各々の細胞への分化は免疫染色にて確認した。すなわち血管内皮細胞はCD31、Claudin5の、壁細胞はPDGFRBの、星状細胞はGFAPの発現を確認した。さらに内皮細胞の機能実験を行なった。具体的には、蛍光標識した10 kDaと400 Daのデキストランの透過を培養液の蛍光強度を測定した。その結果サイズ依存性の透過性(p < 1X10-7)を確認した。さらにデキストランとトランスフェリンの依存性の比較からレセプター依存性の選択的透過性(p < 1X10-6)を確認した。さらにエンドサイトーシス阻害剤であるDynasoreを用いてエンドサイトーシス機能を有していること(p < 1X10-5)も観察した。以上から機能的に内皮細胞機能を有していることを示した。そして壁細胞をインサート膜内へ培養し、その上部に内皮細胞を培養、さらにインサート膜裏に星状細胞を播種することで、本来のBBB構造により近い三重培養に成功した。さらにこれらの細胞を用いて、血管内皮細胞をインサート膜内へ、壁細胞と星状細胞をプレート底に培養して作成したiBBBも10 kDaと400 Daのデキストランの透過性からサイズ依存性の透過性を有しており、抗Claudin5抗体による透過性の上昇からタイトジャンクション機能を保持していることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度のiBBBの構築においては、血管内皮細胞をインサート膜内へ、壁細胞と星状細胞をプレート底に培養することで、血管内皮細胞の一層構造を維持したiBBBモデルを確立した。今年度はさらに実挙動に近いiBBB構築を目指し、フローサイトメトリーを用いてCD31陽性細胞を選択的に培養することでより純度の高い血管内皮細胞を培養する。そして本来のBBB構造により近い三重培養モデルを用いて生理学的機能評価を行うとともに、本研究の主目的であるエキソソームそのもののBBB透過性の有無とエキソソームに含有されることによるa-syn透過性の変化を検討する。さらにSNCA A53T変異以外のPD変異(SNCA triplication、ATP13A2変異)とともにPDリスク因子を有する孤発性PD患者のiPS細胞からiBBBを作成し、BBB構成因子の発現蛋白の変化やエキソソーム含有の有無によるa-syn透過性の差を検討する。さらにa-syn毒性によるBBB透過性の変化を解明するために、iBBBに繊維化a-synを投与して透過性の変化を検討する。これには昨年購入した経上皮電気抵抗(TEER)測定器を用いてBBBモデルの経時的機能評価を行う。さらに、認知症のリスク因子であるAPOE遺伝子ε4アレルの有無を検討するため、APOE遺伝子ε4アレルを有するPD患者からiPS細胞を樹立し、これからiBBBを作成しa-synBBB構成蛋白や機能の比較を行う。
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