研究課題/領域番号 |
21K07452
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
三木 康生 弘前大学, 医学研究科, 助教 (30709142)
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研究分担者 |
丹治 邦和 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10271800)
若林 孝一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50240768)
古川 智範 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60402369)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多系統萎縮症 / αシヌクレイン / 記憶障害 / αシヌクレインoligomer / 神経細胞質内封入体 |
研究実績の概要 |
多系統萎縮症(MSA)は自律神経障害、パーキンソニズム、小脳失調を三徴とする脊髄小脳変性症の一つであり、治療法はない。さらに、MSA患者では37%が認知機能障害を呈する。本研究では、任意の時期に発症させることができるMSAモデルマウスを用い、令和3-4年度はoligomerから凝集に至るまでのいずれの段階の異常αシヌクレインが神経細胞の機能障害を起こすのか、そしてαシヌクレインが認知機能障害を惹起するメカニズムを明らかにすることを目指した。そして、令和5年度は新規モデルマウスにαシヌクレインoligomerの形成を阻止しうる新規阻害剤を投与し、oligomerの形成阻止が認知機能の改善につながるかを検討する。以上により、MSAにおける認知機能障害の病態解明ならびに治療法の開発を行うことを目指す。 令和3年度の結果を以下に記載する。MSAモデルマウスはヒト型αシヌクレイン陽性神経細胞質内封入体を海馬に経時的に形成し、ヒト型αシヌクレイン発現4週後より記憶障害を呈した。さらに、oligomer量もMSAモデルの海馬で有意に増えていた。さらに、MSAモデルでは海馬の神経細胞における樹状突起の数がコントロールに比して有意に減少し、長期増強も減弱していた。これらの所見がヒトMSA剖検脳にも認められるかを認知機能正常のMSA患者脳(MSA-NC)、記憶障害を呈するMSA患者脳(MSA-CI)、正常対象例の剖検脳を用いて検討したところ、MSA-NCに比してMSA-CI群の海馬で神経細胞質内封入体の数ならびにOligomer量が有意に増えていた。これらの所見はヒトMSAにおいてoligomer量が記憶障害の形成に関わることを示唆する。 令和3年度で既に全計画の65%を終えることができた。現在oligomerの形成を阻止しうる複数の薬剤をMSAモデルに投与し、その効果を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3-4年度の2年間でMSAモデルマウスとヒト剖検脳を用いた認知機能障害の病態を解明することを当初目標としていたが、初年度でその目標を既に達成した。現在計画を前倒しし、oligomerの形成を阻止しうる複数の薬剤をMSAモデルに投与している。
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今後の研究の推進方策 |
計画を前倒しし、ヒト型αシヌクレインoligomerの形成を阻止しうる複数の薬剤をMSAモデルに既に投与している。一方で、薬剤の効果を最適化する必要があり、薬剤の修飾、薬剤の投与経路、などドラッグデリバリーの観点から総合的に検討している。
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