研究課題/領域番号 |
21K07454
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
代田 悠一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60804143)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 神経回路 / 非侵襲的脳刺激 / 脳磁図 / てんかん |
研究実績の概要 |
本研究では、大局的に発作関連部位を同定するために大規模脳磁図データを用いた検討を行い、脳局所の興奮性を精密に判定するために経頭蓋磁気刺激等の非侵襲的脳刺激法を用いた研究を行うものである。最終的に両者の成果を統合し、的確なてんかん発作リスク予測・治療方針決定に役立つことを検証してゆくことを目指し本年度の研究を遂行した。主な成果として、以下が挙げられる。① 既存の臨床データを活用してより高度な解析を行うためのパイプラインを構築した。被験者個人の頭部画像に対して、脳磁図信号から推測された頭蓋内電流分布を投影するための道筋が得られた。通常のてんかん発作波の解析においては単一ダイポール推定により発作波の頂点近くのタイミングにおける電流源を点推定するが、本手法では電源の空間分布を確率的に推測可能である。② 神経疾患における小脳と大脳の間の大局的機能結合につき、経頭蓋磁気刺激を用いた検討結果を論文として発表した(Shirota et al. Cerebellum 2022)。直接てんかん患者における計測を行った結果ではないものの、患者群での神経回路変化について有意義な結果が得られた。③ 脳刺激下での脳磁図測定の実施可能性について、ファントム(頭部模型)を用いた予備的検討を行った。ファントム内の電流源を脳磁図により推測するにあたり、経頭蓋直流電流刺激の有無は大きな影響を及ぼさないことが示唆された。以上、次年度に向け各要素を有機的に統合するための基礎的な検討が行えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の三本の柱である、① 全脳レベルでの神経回路異常検出法を確立すること、② あらゆる脳部位で局所の神経興奮性を測定可能にすること、③ 上記二者を統合し、発作リスクとの関連を解明すること、の各々について一定の進展が見られたため。具体的には、①においては既存の脳磁図データを用いて、個人の頭部MRI画像上に脳磁図計測結果から推定される頭蓋内電流分布を投影するパイプラインを構築した。②については、小脳大脳連関という大きな枠組みにおける非侵襲的脳刺激法の利用可能性を論文として報告した。③については、脳磁図計測と非侵襲的脳刺激法を有機的に統合するための準備段階として、頭部モデル(ファントム)に対して経頭蓋直流電流刺激を施した状態の脳磁図計測を実機を用いて行い、電流分布が大きなゆがみ無く計測できることを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
① てんかん患者における大局的な神経ネットワークの挙動を解明・類型化する。この目的のため、臨床現場で解析対象とならない発作間欠期の律動波なども包摂しつつ、突発性異常波の焦点を取り巻くネットワークを中心に解析し、個々の症例ベースで発作と関連する脳部位の候補を同定してゆく。② 経頭蓋磁気刺激-運動誘発電位記録、経頭蓋磁気刺激-脳波記録など、様々な計測モダリティを用いて神経回路をリアルタイムに計測する手法を開発してゆく。③ 同一症例において、「脳磁図データに基づくネットワーク解析から発作関連部位を複数同定 → 脳刺激法による各脳部位の興奮性評価」といった一連の計測を行い発作関連部位の重みづけを行うための準備を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の解析はワークステーションの導入無しに可能であったが、次年度に研究を加速させるため導入予定であるため。
|