研究課題/領域番号 |
21K07456
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
瀧山 嘉久 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (00245052)
|
研究分担者 |
下園 啓介 山梨大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (10937949)
土屋 舞 山梨大学, 大学院総合研究部, 臨床助教 (30722615) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | UBAP1 / knock-in mouse / SPG80 / ZFYVE26 / SPG15 |
研究実績の概要 |
1. 我々は、2019年UBAP1 (Ubiquitin associated protein 1) 遺伝子変異により若年発症型の常染色体優性遺伝性痙性対麻痺 (SPG80) が生じることを、欧米とは独立してはじめて見出した。今回、SPG80の表現型を再現できたはじめてのモデル動物 (UBAP1 knock-in mouse) を作成して論文報告した (J Hum Genet 2022)。UBAP1 knock-in mouseは、出生時は正常であったが、数ヵ月後に進行性の後肢の機能障害を呈することが確認された。歩行障害以外の身体的変化はなく、障害は上位運動ニューロンに限局していた。分子病理学的には、脊髄の神経細胞数の減少とユビキチン化タンパク質やオートファゴソームの蓄積、HSPの最も一般的な発症メカニズムの1つである軸索の変性が観察された。また、Rab5およびRab7陽性エンドソームの分布の変化に加え、その数の増加やサイズの縮小が観察され、Ubap1の変異はエンドソームを介した小胞輸送を阻害している可能性が示唆された。現在、我々は、SPG80の治療法開発に向けて薬剤のスクリーニングを継続している。 2. 常染色体劣性遺伝性痙性対麻痺 (SPG15) について欧米の研究者と臨床・分子遺伝学的共同研究を行い、論文報告した (Brain 2022)。36家系44名の臨床像は、痙縮 (64%)、小脳失調 (64%)、パーキンソニズム (16%)、ジストニア (11%)であり、多くの患者に認知機能障害と神経因性膀胱が見られ進行していた。ZFYVE26遺伝子変異は、hot spotなしに遺伝子全般に渡っていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
UBAP1 knock-in mouseを用いた薬剤スクリーニングが順調に進み、SPG80の治療候補薬剤Xが見出せている。さらに、候補薬剤Xの投与量 (500mg/kg/day, 1,000mg/kg/day)、投与期間 (投与開始:歩行障害発症前、歩行障害発症後、投与開始から1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間)、安全性についてknock-in mouseの解析数を増やして検討を行っているところである。SPG15について欧米施設との共同研究を行い、その臨床・分子遺伝学的特徴を国際誌にpublishすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
SPG80の治療候補薬剤Xに関してUBAP1 knock-in mouseを用いて現在検討中であるが、投与量、投与期間と長期投与の効果、安全性などについてさらに検討を進め、drug reposisioningとしてヒトへの臨床治験へと繋げたいと考えている。
|