研究実績の概要 |
最終年度は、 我々が作成したUBAP1 KI mouse (J Hum Genet 2022) を用いてSPG80の治療法開発研究を行った。薬剤Xの投与量を500mg/kg/day (低用量群) と1,000mg/kg/day (高用量群)に分けて、投与開始時期 (生後2.5ヶ月齢または4.5ヶ月齢)、投与期間 (1ヶ月間または2ヶ月間)の違いによる歩行障害の程度をロータロッドテストにより検討した。8~9ヶ月齢mouseの平均歩行時間は、WT (n=23): 153秒、KI (n=9): 111秒であったが、2.5ヶ月齢の1ヶ月間投与では、KI (低用量群, n=4): 104秒、KI (高用量群, n=3): 116秒と高用量群のみわずかに歩行障害の改善が見られた。さらに高用量群の投与期間を2ヶ月間に延長することで147秒と有意な改善が観察された (Mann-Whiteney U test, p<0.05)。4.5ヶ月齢KI mouse (n=6) においても高用量群の2ヶ月間投与では139秒と有意な改善を認めた (Mann-Whiteney U test, p<0.05)。すなわち薬剤XがUBAP1 KI mouseの歩行障害を用量依存性に改善させること、歩行障害発症後のmouseにも効果があること、早期から投与を始めることでより高い効果があることをはじめて示した (論文準備中)。 研究期間全体を通して、新規HSP原因遺伝子であるHPDLの同定 (Brain 2021)、SPG15の臨床・分子遺伝学的研究 (Brain 2022) を欧米施設との国際共同研究として行った。さらにREEP2変異、Chediak-Higashi症候群、乳児期発症SPAST変異、SPG31、一卵性双生児SPG4について臨床・分子遺伝学的研究を行い、論文報告を行なった。
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