研究課題/領域番号 |
21K07463
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
越智 博文 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (20325442)
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研究分担者 |
濱谷 美緒 関西医科大学, 医学部, 助教 (20890809)
芦田 真士 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (60884202)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視神経脊髄炎 / AQP4抗体 / アストロサイト / 濾胞性ヘルパーT細胞 / 補体 / IL6 / GFAP / NfL |
研究実績の概要 |
視神経脊髄炎(NMO)はアクアポリン4抗体(AQP4抗体)が病態に深く関与し、アストロサイトを標的とする中枢神経の自己免疫疾患である。臨床的には重度の視神経炎と脊髄炎を繰り返すことを特徴とすることから、再発予防が極めて重要である。従来の再発予防では、疾患活動性を反映する客観的指標が確立していなかったため、担当医の経験に基づいて副腎皮質ステロイド薬など、薬剤選択と用量設定が行われてきた。しかし、高い有効性が期待できる3剤の生物学的製剤が登場したことで、疾患活動性などの症例間の差に基づいた個別化治療戦略が強く求められるようになってきた。我々は、末梢血濾胞性ヘルパーT細胞(cTfh)が抗体介在性自己免疫疾患である重症筋無力症の疾患活動性を反映することを新たに見出した。そこで本研究では、①NMOの疾患活動性と治療反応性に関連するcTfhサブセットを同定するとともに、②cTfhを含む多面的な免疫学的指標による末梢血免疫モニタリング法を開発し、③免疫学的指標に基づいた薬剤選択と用量設定によるNMOの個別化治療戦略を確立することを主な目的とした。これまでに、初発症例の継続的な追跡により、血清AQP4抗体価は治療介入後は経時的に低下傾向となること、また、補体C5を標的としたエクリズマブ治療のみならずIL6シグナルを標的としたサトラリズマブ治療においても、血清中の補体濃度の低下が認められることを確認した。さらに、NMO脳脊髄液中ではBAFF、CXCL10、CCL20、CCL2、IL6、IL17Aが高値であることを新たに確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において、NMOの免疫病態にかかわる血清中のAQP4抗体価や補体の濃度は、急性期治療後は経時的に低下傾向になることが明らかとなった。一方で、経口ステロイド薬や免疫抑制薬で治療中の安定期にある患者では、AQP4抗体価や補体の濃度には大きな変化はなかった。しかし、本研究においては、現時点までに治療中の再発患者は確認されていない。従って、これらの指標の変化が疾患活動性、あるいは治療効果を反映しているか判断することはできない。現在、さらに症例数を増やすとともに追跡期間を延長し、神経学的評価に加えcTfhや形質芽細胞、AQP4抗体価、血清補体濃度などの免疫学的指標の測定・解析を継続している。 これまでの解析では、重症筋無力症のようにIL21を高発現するcTfhの増加は確認できていない。しかし、解析対象となった患者の多くは、経口ステロイド薬や免疫抑制薬で治療中の安定期にある患者であった。そのため、経時的な追跡・解析を継続することで、疾患活動性の変化に伴うcTfhの機能的、あるいは量的変化を検知できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、NMO患者を対象に神経学的評価のほかに、再発患者では急性期治療の前後で、安定期の患者では受診頻度に応じて3から6ヶ月ごとに末梢血サンプリングを実施する。また、サンプリングで収集した試料を用いて、NMOの末梢血免疫病態の中核となる①cTfh、②形質芽細胞、③AQP4抗体価、④補体、⑤Th17、また、組織傷害を反映する血中の⑥GFAP濃度と⑦NfL濃度を経時的に追跡し、治療薬、再発や治療反応性との関連を解析する。最近、血清中のGFAP濃度が慢性に進行する組織傷害の程度を反映する可能性が指摘されている。そこで、次年度以降は組織傷害を反映する血中のGFAP濃度とNfL濃度の測定を優先させ、治療薬や各種免疫学的指標との関連解析を急ぐ予定である。さらに、末梢血cTfhの細胞表面分子の発現や、サイトカイン産生能の変化を経時的に追跡し健常者と比較するとともに、組織傷害を反映する血中のGFAP濃度やNfL濃度との関連、また、治療薬、再発や治療反応性との関連を解析することで、cTfhが疾患活動性や治療効果を反映する免疫学的指標となりうるか検証する。
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