研究課題/領域番号 |
21K07467
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
中村 優理 国際医療福祉大学, トランスレーショナルニューロサイエンスセンター, 准教授 (40822375)
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研究分担者 |
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
今村 友裕 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 講師 (30725122)
渡邉 充 九州大学, 大学病院, 助教 (30748009)
吉良 潤一 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 教授 (40183305)
Maimaitijiang Guzailiayi 国際医療福祉大学, トランスレーショナルニューロサイエンスセンター, 特任助教 (60887107)
真崎 勝久 九州大学, 大学病院, 講師 (90612903)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 脱髄疾患 / 神経免疫疾患 / グリア / エクソソーム / コネキシン |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)は、再発寛解型で発症しても半数は二次進行型へ移行し、脱髄炎の慢性進行に伴い軸索障害が進む。アストログリアやオリゴデンドログリアは、コネキシン(Cx)で細胞間ギャップ結合を形成しエネルギー源やカリウムイオンのやり取りを通じて脳の恒常性を維持している。私たちはMSモデルの実験的自己免疫性脳脊髄炎においてグリアCxが代謝機能ばかりでなく脳炎症を制御する重要な役割を担っていることを明らかにした。グリアから放出されたエクソソームは血液脳関門(Blood brain barrier, BBB)を通過できるので、本研究ではエクソソームに着目した。野生型マウスEAEでは、ウェスタンブロット法で末梢血で急性期から慢性進行期にかけてCx43をコードするGJA1の低分子量トランスレーショナルイソフォームであるGJA1-29kを発現するエクソソームが著増した。一方、アストログリア特異的Cx43 inducible conditional knockout (icKO)マウスのEAEでは、それが著減した。さらに、MS患者の各病期でのCx含有エクソソームの定量的ウェスタンブロット解析を行った。MSでは、再発緩解型再発期と二次進行期で末梢血でアストログリア由来のglial fibrillary acidic protein含有エクソソームが増加するともにGJA1-29kが著増しGJA-11kが著減する変化を発見した。Cx43の低分子量isoformは、低酸素ストレスなどで発現が亢進し、チャネル機能を失うがRNA/DNA結合部位を保持する。GJA1-29kはマイクロRNA (miR)等を伝搬し、GJA-11kは核移行し細胞増殖を抑制する。したがって、GJA1-29kの増加と11kの減少は、脳のグリア炎症を反映していると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多発性硬化症の末梢血で、初めてエクソソーム中のコネキシン43低分子量エクソソームの異常を発見した。同様の変化を、多発性硬化症の動物モデルの末梢血でも見出した。したがって、この変化は、脳の脱髄炎に関連したものと考えられた。しかもアストログリアコネキシン43を決失させることで、末梢血のGJA1-29k含有エクソソームが著減したことから、その大部分は脳のアストログリア由来であることを証明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、多発性硬化症の類縁疾患である視神経脊髄炎において、末梢血エクソソームの解析を進める。特にコネキシン43(Cx43)の低分子量イソフォームの変化が、多発性硬化症と視神経脊髄炎で異なっているかを定量的ウェスタンブロット法で明らかにする。また、血清およびエクソソーム中の、neurofilament L、glial fibrillary acidic proteinを、single molecule array (SIMOA)で測定し、血清およびエクソソーム中の脳由来分子の動態と、Cx43低分子イソフォーム含有エクソソームとの関連を明らかにする。さらに、Cx43低分子量エクソソームが含有するマイクロRNAの次世代シークエンスを行い、特有なマイクロRNAの変化がみられるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体などの試薬の納品が遅れたこと、及びコロナ感染流行のために対象患者の受診が控えられて、当初の予定どおりに症例のエントリーが進まなかったため。
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