研究課題
(1)TMSによるクロザピン(CLZ)の反応性に関する電気生理学的研究我々は既にCLZによるTMSで測定された皮質静止時間(CSP)の延長を見出していたが、本所見の臨床的意義を見出すため、CSPに関するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。文献サーチで17論文が解析対象となり、1)病期別(初発エピソードと慢性期)に解析で、初発エピソード・慢性期共に統合失調症患者のCSP値は健常群と有意差は無かった。2)抗精神病薬別(CLZ、オランザピン/クエチアピンとその他)の解析では、CLZ治療患者では健常者に比して有意に延長していた。オランザピン/クエチアピンでは差がなく、他の抗精神病薬治療患者では健常群よりむしろ短縮していた。この結果からCLZ治療によってCSPが亢進する所見は信頼度が高く、病期などの疾患由来の所見でなく、薬理学的作用を反映する可能性が示された。(2)TRS患者遺伝子検索前頭葉皮質GABA介在細胞に対するドパミン作動性神経の投射は統合失調症の認知機能などに関連するネットワークと推定されており、COMT遺伝子rs4680 (Val158Met: G>A)とGAD1遺伝子5’-UTR 上rs3749034(C>T)を対象に関連解析を実施した。その結果TRS群(n=171)では非TRS群(n=592)・健常群(n=447)よりrs4680 Metアレルとrs3470934 C/C遺伝子型の保有者が多かった。先行研究ではこの遺伝子型は高ドパミン+GABA低発現が推定される組合せである。(3)TRS患者血清オキシトシン濃度測定24名のTRS患者、36名の非TRS患者を対象に縦断的に2回サンプリング(平均間隔5.2年)し、健常者(n=55)とオキシトシン濃度を比較した。TRS群では1回目と2回目共に非TRS群よりもオキシトシン濃度は低値傾向であったが、有意差はなかった。
3: やや遅れている
本課題を精力的に実施続けているが、元々研究計画の内容が盛りだくさんであること、目標症例数を高く設定していることから、現時点で、統計学的に正確な結果を得るには、患者のリクルートがまだ少ないと考えている。
(1)TMSによるCSP測定は、薬剤別にデータ集積する必要があり、クロザピン及びそれ以外の薬剤で治療中の患者でも測定を継続し、目標症例に到達するようにする。(2)遺伝子解析はドパミン系とGABA・オキシトシン系の分子をコードする遺伝子多型に対象に、ターゲットシークエンス法によって検証する予定。(3)オキシトシン測定に関して、TRS患者では低値である可能性がやはりあることから、患者数を増やし検証する必要がある。研究協力機関を増やして、サンプリングを実施し、TRS患者を最低100症例収集したい。
進捗が比較的順調だったため、年度後半で前倒し請求を50万円行うこととした。同時に本研究の成果を論文投稿したところ、査読に長期間要し投稿結果が得られず、次の計画が立てにくくなってしまった。また花巻病院との共同研究も、新型コロナ感染の拡大と地震や大雪で往来が難しい状況となり、進捗のペースが低下してしまった。2022年度においては、オキシトシン濃度測定と関連遺伝子の検索に主に充てて行く予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件)
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