研究課題/領域番号 |
21K07476
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
金原 信久 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 講師 (70507350)
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研究分担者 |
伊藤 文晃 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (10535157)
仲田 祐介 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40836962)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 治療抵抗性統合失調症 / クロザピン / 経頭蓋磁気刺激装置 / 皮質静止 / 遺伝子多型 / GABA / オキシトシン |
研究実績の概要 |
(1)TRS患者遺伝子検索 統合失調症患者(TRS:428名、非TRS:543名)と健常者(HC:485名)のDA関連遺伝子(TH・DRD2・COMT・SLC6A3(DAT))上の計8種の機能多型について関連解析を行い、これらのTRS診断への寄与を検証した。SLC6A3上のrs3756450が唯一3群間で差を認め、TRS群ではAアレル、非TRS群ではGアレルが有意に優勢であった。COMTとSLC6A3の組合せ解析で、TRS群はHC群・非TRS群に比し低DA型アレル(COMT高活性+SLC6A3高活性)の比率が有意に高かった。一方、非TRS群の低DA型アレル保有者は少数であったが、他のアレル保有者より軽度の精神病理を呈していた。DATは抗精神病薬に対する反応性に関与している可能性がある。シナプス間隙のDAレベルを調節に関与する遺伝子多型はTRSへの発展に関与している可能性が示唆された。 (2)クロザピン治療反応性に関する臨床研究 TRSに移行してからクロザピンを導入するまでの期間(クロザピン導入遅延)は近年クロザピン導入後の治療反応性に関係することを示す報告が増加している。この導入遅延期間とドパミン過感受性精神病(DSP)との関連、また治療反応性との関係を検証した。 47名のTRS患者をDSPタイプの患者(32名)と非DSPタイプ(15名)に分け、クロザピン導入遅延期間と導入後2年時の症状改善を評価した。その結果DSP患者では導入遅延期間が平均59.30カ月と非DSP患者(平均25.33カ月)と有意に長かった。ベースライン-2年後のGAFがDSP患者平均20.75→41.20、非DSP患者平均25.60→50.71であり、ベースラインで群間差が無かったが、2年時点でDSP患者は非DSP患者に比し有意に低値だった。DSP患者では導入遅延期間が長期に及んでおり、クロザピン導入後の改善度が小さいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではもともと複数の研究内容を並行して実施する計画であったが、コロナ禍の影響も大きく、対象患者からの検体サンプリングが予定通りに進んでいないことによる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)TMSによるCSP測定は引き続き、薬剤別のデータ集積を積み上げ、クロザピン及びその他の薬剤における治療反応性とCSPとの関連を検証する。 (2)治療抵抗性患者におけるSLC6A3遺伝子の関与が、関連解析の結果から示されたため、対象患者ゲノムを用いてSLC6A3のリシーケンシングを実施する。 (3)オキシトシン濃度測定に関しては、引き続き研究協力機関を通じて、サンプリングを行い、目標症例数100症例を対象に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度のデータの解析などに時間が費やしてしまい、遺伝子関連の研究に遅延が生じたことで繰り越しとなった。次年度では予定通り試薬等の購入に充てる予定。
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