我々は、うつ病患者129人、統合失調症患者71人、健常対照者71人を対象とし、血清コルチゾールとinsulin-like growth factor-1 (IGF-1)を測定し、精神症状の重症度を評価した。その結果、血清cortisol値はうつ病よりも統合失調症のほうが高く、血清IGF-1値と重症度の相関関係はうつ病と統合失調症で異なっていることが示され、これらのホルモンの差異が2つの疾患の病態生理学的な相違点を現す可能性が示唆された。また、うつ病患者(非寛解患者84名、寛解患者36名)および健常対照者99名を対象とし、絶食後に血液検体を採取し、血清IGF-1値ならびにホメオスタシスモデル評価法によるインスリン抵抗性(HOMA-IR)や臨床因子との関連を調査した。その結果、非寛解状態のうつ病患者においてのみ、血清IGF-1値がインスリン抵抗性と正の相関関係にあり、寛解したうつ病患者では関連しなかったことをはじめて明らかにした。さらに、我々は縦断研究を行い、血清IGF-1ならびにdehydroepiandrosterone sulfate値が、うつ病の治療抵抗性を予測する因子となり得る可能性を示した。 本研究の結果から、ホルモンがうつ病の重症度やインスリン抵抗性、治療抵抗性と関連する可能性が示唆された。今回の成果は、ホルモンがうつ病の診断や治療反応などを予測する生物学的マーカーならびに新たな治療法の確立につながり得る可能性を示唆し、精神医学において大きな意義があると考える。
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