研究課題
低血糖症状は精神症状と類似しており、精神科診療の中で低血糖を把握することは困難である。そこで本課題では、24時間血糖をモニタリングし、抗精神病薬服用による低血糖のリスク因子を明らかにすることで予後改善の可能性を見出すことを目的とした。対象は、抗精神病薬を服用中で糖尿病に罹患していない統合失調症患者52名である。これらの対象者に対して24時間血糖モニタリング(リブレプロR)を施行した。対象者の平均年齢は56歳であり、男性は26名、女性も26名であった。対象者のうち48例が入院患者であった。52例中、1例は2日目でリブレがはがれたため、データを採用しなかった。その他の症例については4日から14日のデータを得られたため、その平均値を用いて解析を行った。なお、本研究は獨協医科大学病院倫理委員会で承認を得た後に行い、各患者から書面で同意を得て実施した。解析の結果、22時から8時の間において、患者の平均血糖値は低血糖の指標である80㎎/dlを下回ることが多いことが判明した。特に22時から6時の間においては、血糖値が臨床的に重大な70㎎/dl以下になることが確認された。さらに、2時から4時の間では、80%の症例で低血糖が見られ、4時から6時の間では71%の症例で低血糖が確認された。最低血糖値は40㎎/dlであった。24時間平均グルコース値の平均(標準偏差:SD)は78.5(15.9)㎎/dlであった。これらの結果は、抗精神病薬を服用している統合失調症患者において、特に夜間の低血糖のリスクが非常に高いことを示している。精神症状の管理と並行して低血糖のモニタリングを行うことが、患者の安全と健康を確保するために不可欠であることが明らかになった。この研究は、精神科領域における低血糖管理の重要性を強く示唆するものであり、臨床現場での新たな対応策の確立に貢献する可能性がある。
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