研究課題/領域番号 |
21K07487
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
村山 綾子 沖縄科学技術大学院大学, 神経回路ユニット, スタッフサイエンティスト (80378009)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マーモセット / フェンサイクリジン |
研究実績の概要 |
統合失調症の生涯発症率は人口の約1-2%と言われている。しかし、ドパミン過剰による発症機序の解明が進む一方、グルタミン酸仮説に基づく発症機序や、皮質下構造の病態、関与する神経回路など未解明な点が多い。本研究では、すでにマウスで確立されている方法を応用し、NMDA型グルタミン酸受容体アンタゴニストであるフェンサイクリジン(PCP: phencyclidine)誘導による統合失調症モデル コモン・マーモセット(以下、PCPマーモセット)を作出し、その行動解析を行う。さらに、近年、統合失調症特異的に淡蒼球左優位に体積増加変化が起こることがヒトで明らかにされており(Okada et al., Mol Psychiatry, 2016)、PCPマーモセットの定期的な脳MRIを撮像し、体積変化の画像解析を行う。最終的には、免疫組織学的解析を行うことで、病態と脳体積変化がどのように関係しているのかを明らかにすることを目指している。 本年度は、マウスの統合失調症発症モデル作出法として確立されているPCP連続投与方法をマーモセットに応用し、皮下埋め込みポンプを行いた系を確立した。社会性行動、恐怖反応、不安反応を観察し、PCP連続投与による行動変化が観察できた。これと並行して、定期的に脳MRIの撮像を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーモセットにPCP連続投薬を行う方法として、皮下埋め込みポンプを行いた系を確立した。実験計画にある行動解析を進めつつ、病態をより多角的に解析できるよういくつかの新しい社会性行動や恐怖反応、不安反応を計測するバッテリーを追加し、PCP連続投与による行動変化が観察できている。行動解析と並行して、定期的にPCPマーモセットの脳MRIの撮像を行っている。マーモセットの皮質下領域の境界線を明示することが非常に難しく、コントロールとなる野生型マーモセットの淡蒼球亜領域の解析がやや遅れていたが、解剖学の専門家とのディスカッションを通じて遅れを取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
(1) PCP連続投与における行動観察とその解析を継続し、病態との関連を明らかにする。 (2) PCPマーモセット脳MRI撮像を継続し、統合失調症に関わる領域の体積変化を解析し、PCPマーモセットにおける形態学的な病態変化を明らかにする。 (3) 一定期間の連続投与を終了したのち、統合失調症特異的な形態変化を引き起こす病態を、組織学的および細胞学的に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次度のマーモセット飼育代(ケージ代も含めて)の増額が見込まれたため、今年度の支給額の中から繰越をした。 昨年度中に納品される予定であった薬剤が年度を跨いでしまったので、今年度支払いするために繰り越した。
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