研究課題/領域番号 |
21K07513
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
細川 雅人 福岡大学, 薬学部, 准教授 (00435116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TDP-43 / ゲノム編集 / 前頭側頭葉変性症 / モデルマウス |
研究実績の概要 |
前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration: FTLD)の脳ではTDP-43の異常蓄積が認められるが、その蓄積・伝播機構に関しては不明な点が多い。適切な動物モデルが存在しないことから、脳内でのTDP-43のプリオン様伝播の解析や、FTLD発症抑制候補薬物の探索が行われていない現状がある。そこで我々は新規にヒト型TDP-43ノックインマウスを作製した。このマウスの脳にFTLD患者脳由来の界面活性剤不溶性画分を接種し、新たなFTLDモデル動物を構築することにした。 ヒト型TDP-43-KIマウス(ヘテロ接合体)の作製が完了し、脳・脊髄においてヒトTDP-43の恒常的な発現が認められた。しかし、この時点ではヘテロ接合体であるため、マウス内在性のTDP-43も同時に発現している。そこでヘテロ接合体マウス同士の交配によりヒト型TDP-43-KI(ホモ接合体)マウス作製に取り組んだ。ヘテロ接合体同士の交配で生まれた仔マウス189匹のジェノタイピングを行ったところ、ホモ接合体0匹、ヘテロ接合体109匹、ワイルドタイプ80匹と、メンデルの法則に従わない結果となった。この結果からホモ接合体マウスの作製は困難であると判断し、今後はヘテロ接合体マウスを用いて実験を行うことに決定した。 TDP-43-KIマウス(ヘテロ接合体)の線条体へFTLD患者から調整した界面活性剤不溶性画分を接種し、3ヶ月経過後の脳を組織化学的に解析したところ、大脳皮質に少量のTDP-43凝集体の蓄積が観察された。現在、不溶性画分接種後、6ヶ月経過後の脳を解析する準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年4月に研究代表者が異動した。異動先で新規に遺伝子組み換え実験計画書・動物実験計画書を提出し、許可される必要があった。また、動物を移転させるにあたり、前勤務地と異動先間でmaterial transfer agreementを締結する必要があった。すべての書類手続きが終了したのが2021年12月であった。2022年1月より前勤務地で遺伝子改変動物移転の手続きを開始し、2022年2月に申請が許可された。2022年3月に該当の動物を移転させ、異動先での飼育が始まった。
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今後の研究の推進方策 |
TDP-43-KIマウス(ヘテロ接合体)の線条体へFTLD患者から調整した界面活性剤不溶性画分を接種し、3ヶ月経過後の脳を生化学的に解析し、異常TDP-43の蓄積を確認する。また、不溶性画分を接種後6ヶ月、9ヶ月の脳を組織化学的、生化学的に解析する。 FTLD患者由来不溶性画分をTDP-43-KIマウスに接種した後、記憶・運動に対する行動試験を行う予定である。さらに異常凝集タンパクが個体間で感染する可能性について、FTLD患者脳不溶性画分を接種したマウスと野生型マウスを同居させ、一定期間後に脳病理を調べ、プリオンタンパクのように個体間での感染性があるか否かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動に伴い、使用する動物の移転手続きに時間がかかり、計画通りの実験を実施できなかったため。次年度使用額は試薬・プラスチック類などの消耗品、接種用シリンジ・針などの購入に充てる計画である。
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