不確実性への不耐性(intolerance of uncertainty: IU)は、「予測不可能で不確実な将来の出来事を恐れる傾向を反映し、不確実性を感じることは望ましくないと信じている特性」とされ、心配についての前向きな信念、問題解決に対する否定的な態度、認知的回避から構成される。 摂食障害は主に神経性やせ症(Anorexia nervosa: AN)と神経性過食症(Bulimia nervosa: BN)を指すが、その増加や若年化や中高年発症などが近年社会問題となっている。摂食障害の発症の背景には遺伝的素因、性格傾向や認知の偏り、社会文化要因など様々な要因が考えられているが、その病態は解明されていない。ANとIUの関連については、2010年台後半から報告がなされるようになってきた。これらの報告では、AN患者におけるIUと社会問題解決能力の低下との関連性や、IUと失感情症との関連性が報告がされている。本研究では、IUの背景をなす脳基盤を計測するための心理課題として、「間違い探し課題」を新規作成し、その妥当性を検討した。健常者を対象に、IUを評価する尺度としてIntolerance of Uncertainty Scale(IUS)とThe Short Intolerance of Uncertainty Scale(SIUS)を用い、「間違い探し課題」を行ったところ、高IU群と低IU群で異なる反応が観察され、特に高IU者は不確実性を低減させる情報を得ると課題成績が向上するものの不安は軽減されない傾向があった。これはANに特徴的な「完璧主義」特性と関連して、高IU者が課題に対して完璧主義的な高い期待を持つことにより、課題成績は向上したものの不安やストレスは軽減されなかった可能性が示唆される。
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