研究実績の概要 |
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療および観察等に関する法律(以下「医療観察法」という。)」の対象者は、当初審判にあたり鑑定入院されられる。我々は鑑定入院制度の「運用実態が明らかでない」「医療の質にバラツキがある」「目標設定が明確でない」といった問題に対し検討を重ねてきたが、鑑定入院で付添人弁護士の果たすべき役割については明らかになっていない。 そのため、本研究においては、医療観察法鑑定入院対象者に対する付添人弁護士が医療連携活動において果たすべき役割を明らかにすることを目的とした。 「ひまわりサーチ」に取扱業務として「心神喪失者付添」を登録している弁護士事務所(東京都は「出身地」登録のある事務所に限る)1,116件に対し調査票を郵送し回答を求めた。 2022年7月に調査票を発送し、10月末までに143件の回答を得た。うち付添人活動歴のある者の割合は44.1%であった。当初審判の経験者61名を対象に結果を分析した。57.4%が、関係機関との連携に困難を感じたことがあると回答した。具体的内容としては、家族の無理解及び対象者本人との疎通の問題が多かった。27.9%が、鑑定入院医療機関での医療内容に疑問を持ったことがあると回答した。具体的内容としては、対象者への治療提供の不足が多かった。24.6%が、関係機関との連携の経験があると回答した。具体的内容としては、主治医に対する申し入れや、退院先ないし帰住先との連絡調整が多かった。今後の課題として、関係者による制度理解の深化や、立地条件や経費の問題等が挙げられた。 付添人弁護士の多くが関係機関との連携に課題を感じていた。鑑定入院医療機関に対する疑問も散見された。今後は関係者の啓発及び連携の強化が必要である。
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