2021年度は、アプリを用いて、日常生活情報、気象、痛みの情報を収集し、疼痛関連因子の解明した。歩数と疼痛尺度との関連は、制限付き三次スプラインモデルを用いて解析した。合計6138件の記録からデータ欠損のない1273件を解析した。歩数が1日3045歩以上と5668歩の人は、1日1199歩以下の人に比べて、歩数の多さと疼痛尺度の低さの間に有意な正の相関を示した。歩数と疼痛尺度の関連について制限付き三次スプラインモデルを用いると、歩数の増加とともに急減し、その後緩やかに減少した(変曲点は5000歩)。しかし、この関連は、2000歩以下で急な正の増加を示した。線維筋痛症では認められなかったが、歩数は、疼痛尺度との非線形な関連性を示した。線維筋痛症とそれ以外の慢性疼痛は歩数と疼痛尺度の間に負の相関を示したが、線維筋痛症は、慢性疼痛と比較して、歩行と痛み知覚の間に異なる機序が生じている可能性がある。 また、痛みのない、ブレインフォグを有したコロナ後遺症と、痛みがあり疲労感、ブレインフォグを有する線維筋痛症のfMRIを施行し、疼痛に関する脳領域の同定を行った。 コロナ後遺症24名、線維筋痛症24名、正常群24名 に対して安静時fMRIを施行した。 線維筋痛症群では、正常群と比較して先行研究と同様にDMN領域の機能的結合の高さを認めた。コロナ後遺症群では、正常群と 比較してPlanum Polareと小脳との機能的結合の高さを認めた。線維筋痛症群では、コロナ後遺症群と比較してセイリエンスネットワーク領域の機能的結合が高い傾向を認めた。Planum Polareは気分障害の抑うつとの関連も言われており、コロナ後遺症の抑うつ症状との関連が推測された。痛みにセイリエンスネットワーク領域が 関与していることを示唆した。この結果は、先行研究からも裏付けされる。
|