研究課題/領域番号 |
21K07529
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
高井 憲治 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (60121167)
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研究分担者 |
清水 潤 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (30509964)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知症 / hiPS由来神経前駆細胞 / 細胞移植 / Reelin / Eph/Ephrin経路 / Reelin分泌細胞 / 海馬治療 / 神経再生 |
研究実績の概要 |
わが国の認知症罹病者は2012年に約460万人となっており、2050年になると1,000万人、高齢者の5人に1人に迫る。アルツハイマー型はその7割を占め、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)のような病状を抑制するような薬が用いられる。また抗アミロイドβプロトフィブリル抗体製剤が新薬承認申請に上がっている。しかし、これらは根治療法ではない。そこでヒトiPS細胞(理研細胞バンク:253G1株)由来の細胞を、EB化の後、神経系への分化刺激(retinoic acid、sonic hedgehog、nogginを培地に添加)を施してニューロン前駆細胞(NSPCs)とし、この細胞を認知症モデルマウス(Jackson laboratory:PDAPP-Tg系、B6.Cg-Zbtb20<Tg(PDGFB-APPSwInd)20Lms>/2Mmjax)の海馬に移植した。すると認知機能の改善が見られた。NSPCs移植が認知症マウスの神経回路の再構築をした可能性が高い。移植NSPCsがReelinを産生し、宿主と移植細胞に作用して、下流の細胞内アダプタータンパク質であるDisabled1(Dab1)とセリンスレオニンキナーゼAktをリン酸化し、その下流の細胞内シグナル伝達を経てEphrinB3がシナプス形成を活性化する経路が推定され、一方でEphA4のシグナル伝達を遮断することで認知症マウスの海馬の神経再生を誘導して神経回路の再構築が起こり、認知機能が改善されたと推定される。本研究では移植NSPCsが認知症での解剖学的・機能的な再生を起こす際の神経回路の再構築および、宿主神経組織との高次構造形成時におけるReelinからEph/Ephrinに至るまでのシグナル経路を介した細胞分化およびその成熟による回復メカニズムを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
認知症モデルマウス(Jackson laboratoryのPDAPP-Tgマウス)に、ヒトiPS細胞(理研細胞バンク:253G1株)に神経分化処理を施した神経前駆細胞(NSPCs)を、マウスの海馬に移植した。移植の前後に認知症の評価のためにモリス水迷路試験を行って認知機能の改善を確認したのち、脳の固定スライス切片サンプルを作製した。ここで、神経変性回復プロセスの起点となる、移植NSPCsによるReelin分泌性を、NSPCsをin vitroで培養してReelinの発現分泌をELISAで調べた。未分化のhiPSからのin vitroの系として、分化培地で4週間培養した。培地中のReelin濃度を分化過程数ヵ所に区切って調べた。すると3~4週間後にReelinが0.2~0.3ng/ml発現した細胞群が得られた。途中の段階で0.1ng~0.15ng/mlの発現分泌を見た細胞群もしばしば見られた。海馬の主要な情報伝達には臭内皮質を通じて歯状回門→CA3→CA1と投射される3シナプス回路があり、シナプスにおいてpDab1-synapsin1-ApoER2-AMPAR(GluR2)-GRIP1-EphrinB2-CREB-NFMのような複合体形成が行われ、WTマウス海馬での顆粒細胞・苔状細胞・錐体細胞での2者分子間での共発現が確認された。これに対し、pDab1に欠失があるyotariマウスはpDab1シグナルを欠き、シナプス形成と情報伝達が途絶えて、歯状回門、CA3、CA1の形態的細胞層構造が不完全のままに留まっていることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
移植するNSPCs(理研細胞バンク、253G1株由来)がReelinを産生して、下流のDab1をリン酸化し、シナプス形成を促進して治癒が可能と考えられる。EphrinB3が脳室下帯での成体の神経発達中にEphA4受容体の機能を阻害することにより、細胞死を減らすことができる。認知症マウス(Jackson laboratory:PDAPP-Tgマウス)に認知機能の改善が見られた場合その海馬では神経経路が再構築されたと考えられる。海馬において移植した細胞がReelinを産生し、下流のDab1やAktをリン酸化させた後、シナプス形成とシナプス形成に関わるさらに下流の細胞内シグナルを変化させてCREBやEphレセプター/Ephrinの活性化が起こり、種々の遺伝子の転写を活性化して神経分化、細胞の生存や突起伸長、記憶や学習機能を制御すると推定される。マウス発生期のReelinには大脳皮質の層構造の構築という重要な役割が明らかになっているが、これに比較して、成体期の役割はあまりわかっていない。Reelinにはアミロイド前駆タンパク質(APP)に直接結合してβアミロイドペプチド産生を減少させるという報告がある。認知症がReelin発現量の低値から引き起こされるとすると、NSPCsの移植によってReelinが供給され、神経細胞上の、ReelinレセプターであるApoER2、VLDLRに結合し、Fynキナーゼを活性化し、Reelinの細胞内アダプタータンパク質であるDab1のチロシンリン酸化を誘導して、以後、神経再生に至る過程が続くと推定される。yotari由来のneurosphere構成細胞にpDab1 geneを導入すればpDab1以降のシグナル伝達系が作動し、細胞の運動神経化が行われると予想される。このことは遺伝子治療を考える上で見逃せない。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、実験器材の購入額が予定したより低かったためである。 また、使用計画は、実験器材追加購入と、研究技術員への人件費を予定している。
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