研究課題/領域番号 |
21K07530
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
中島 昭 藤田医科大学, 医学部, 教授 (20180276)
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研究分担者 |
山口 央輝 四日市看護医療大学, 看護医療学部, 准教授 (70319250)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NT5DC2 / チロシン水酸化酵素 / パーキンソン病 / カテコールアミン |
研究実績の概要 |
我々は、機能不明の細胞内タンパク質NT5DC2がカテコールアミン合成を抑制することを2019年に発見した。カテコールアミン合成経路におけるNT5DC2の役割を明確にするため、NT5DC2がフォスファターゼとして機能するかどうかに着目して解析を進めた。 1)NT5DC2がチロシン水酸化酵素のリン酸化に及ぼす影響: ①NT5DC2発現ベクターおよびNT5DC2分子にFlag-tagを組み込んだ発現ベクターを作製した。これをPC12D細胞内で過剰発現させた後、細胞内で発現しているチロシン水酸化酵素のリン酸化の変化をウェスタンブロット法で解析した。 ②ヒトチロシン水酸化酵素のcDNAを組み込んだベクターを用いて大腸菌内で強制発現後、ヒトチロシン水酸化酵素を均一のタンパク質として精製した。次いで、ヒトチロシン水酸化酵素にキナーゼを添加して、試験管内でリン酸化チロシン水酸化酵素を作製した。このリン酸化チロシン水酸化酵素を用いて、NT5DC2による脱リン酸化作用を解析した。 2)NT5DC2の機能解析: Flag-tagを組み込んだ発現ベクターをPC12D細胞内で過剰発現させた後、磁器ビーズを用いてNT5DC2を均一なタンパク質として精製した。この精製NT5DC2にフォスファターゼの合成低分子基質を加え、酵素活性を解析した。 3)NT5DC2へ結合するタンパク質の網羅的解析: NT5DC2-Flag-tag発現ベクターをPC12D細胞内で過剰発現させ、磁気ビーズを用いてNT5DC2-Flag-tagを精製した。これをトリプシン分解後、生成したペプチドをLC-MS/MSを用いてプロテオーム解析して、NT5DC2に結合するタンパク質の網羅的に同定した。この実験は2022年度も行ったが、さらに精度を上げることで標的タンパク質を絞り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」欄にある1)NT5DC2がチロシン水酸化酵素のリン酸化に及ぼす影響、3)NT5DC2へ結合するタンパク質の網羅的解析、については概ね順調に進んでおり、結論が得られつつある。一方、2)NT5DC2の機能解析、についてはデータのばらつきが大きく、NT5DC2の精製度を上げたうえで繰り返して実験を行う必要がある。 また、「細胞内局在部位解析に基づくNT5DC2の機能の解明」を行う予定であったが、これについては準備を進めている段階にある。これまで得られている情報を裏打ちするだけでなく、タンパク質の機能を明確にするためには細胞内局在の解析が重要となるためである。
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今後の研究の推進方策 |
NT5DC2の機能解析が本来の目標である。現時点ではNT5DC2はチロシン水酸化酵素のリン酸化調節、特に脱リン酸化に関与していることが分かっているが、これはNT5DC2の細胞内での一部の役割である可能性が高い。そのため、チロシン水酸化酵素以外の細胞内タンパク質、特にカテコールアミン合成系酵素との関連性に注目しており次の実験を進める予定である。 1)NT5DC2と細胞内タンパク質との相互作用: NT5DC2はチロシン水酸化酵素のリン酸化に関与することを明らかにした。また、LC-MS/MSの解析精度を上げたことにより、チロシン水酸化酵素とは異なる細胞内タンパク質との相互作用も想定される解析結果が得られている。これらの相互作用が、細胞の生理機能に影響を与えるているかどうかを明確にするために解析を進める。 2)NT5DC2の細胞内局在の解析: タンパク質の機能を明確にするためには細胞内局在の解析が重要となる。プロテオーム解析を用いて得られたNT5DC2と相互作用するタンパク質の情報に、細胞内局在の情報を加味して、NT5DC2の機能を推定する。細胞内局在は抗体を用いた免疫染色だけでなく、NT5DC2を発現するGFP融合ベクターの作製も有効であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画に基づいて試薬・消耗品等を購入したが、大学調達課の努力により納入価格が当初予定額よりも低くなったため、未使用額が生じた。次年度(令和5年度)に繰り越された未使用額については、効率的に実験が遂行できるような適切な試薬の購入に充てる予定である。
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