研究実績の概要 |
東北メディカルメガバンク機構(TOMMO)より分譲された遺伝子型情報と睡眠表現型情報の解析、及び中枢性過眠症の解析を実施することで、日中の眠気に関与する遺伝的要因の同定を目指した。まずTOMMOのSNPアレイより得られた遺伝子型情報(対象症例数:14,348例)を用いた解析により、オレキシン2受容体遺伝子上の頻度の低い変異(rs188018846、マイナーアリル頻度0.35%)が、一般集団における日中の眠気と有意に関連することを見出した(P = 8.4E-05)。また特発性過眠症患者群においてrs188018846の変異アリルの頻度が高い傾向が観察された(P = 0.09、オッズ比2.07)。 特発性過眠症のゲノム解析を実施し、特発性過眠症の関連変異としてオレキシン前駆体遺伝子のクリベージサイトに位置するアミノ酸置換を伴う変異(p.Lys68Arg)を同定した。患者群ではオレキシン前駆体遺伝子の本変異のマイナーアリル頻度は1.67%で、健常者群での本変異のマイナーアリル頻度は0.32%であり、オッズ比5.36、P値2.7E-08と有意な関連を示した。この変異の機能的な影響を検討するため、変異体と野生型のオレキシン前駆体ペプチドを用いて、切断酵素のPC1/3及びPC2による切断活性を評価し、変異体はほとんど切断されないことを確認した。切断されなかったペプチドは、薬理学的活性が低いこともin vitroレベルで確かめた。 さらに特発性過眠症患者121例及び健常者1,791例のSNPアレイより得られたゲノムワイドな遺伝子型情報、及びPGSカタログより入手したUKバイオバンクの睡眠表現型情報のベースデータを用いて、ポリジェニックリスクスコア(PRS)解析を実施した。その結果、特発性過眠症の患者を、極端な夜型PRSや居眠りPRSが高い群に層別化することに成功した。
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