研究課題/領域番号 |
21K07547
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中尾 智博 九州大学, 医学研究院, 教授 (50423554)
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研究分担者 |
村山 桂太郎 九州大学, 大学病院, 助教 (20645981)
樋渡 昭雄 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院, 教授 (30444855)
豊見山 泰史 九州大学, 医学研究院, 助教 (80893817)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ためこみ症 / Hoarding disorder / 安静時機能画像 / Freesurfer / gyrification / 拡散テンソル画像 / TBSS |
研究実績の概要 |
今年度までにためこみ症26名の臨床データを収集し、頭部MRIの撮像を行った。 島皮質・前部帯状回を関心領域としたSeed-based analysisでは、ためこみ症患者群は健常対照群と比較して、右島皮質と右下前頭回の安静時機能的結合性が低下していること、右島皮質と左上側頭回の安静時機能的結合性が低下していることを明らかにした。これらの脳領域は、先行研究において、意味処理の文脈における認知制御や他者の意図を再評価するような社会的認知に関連していることが示唆されており、本研究の結果は認知制御障害と関連したためこみ症の神経心理学的基礎に新たな洞察を与えるものである。 FreeSurferを用いたsurface-based analysysでは、ためこみ症患者群は健常対照群と比較して左紡錘状回領域、左舌状回領域、左海馬傍回領域および左鳥距溝領域で有意に低い局所脳回指数(Local Gyrification Index: LGI)を示した。gyrificationは、脳表面が脳溝と脳回に特徴的に分化する過程のことであり、胎生期の神経発達の指標と考えられている。したがって、本研究結果はためこみ症が神経発達の要素を有する疾患であること示唆しており、ためこみ症における生物学的基盤に新たな知見をもたらす可能性がある。 研究期間全体を通して、ためこみ症が、その認知機能障害への関与が示唆される皮質領域を接続する前頭白質路において広範な変化を来たしていること、安静時機能的結合性が低下していることを明らかにした。また、側頭葉・後頭葉領域でのhypogyrificationを同定し、ためこみ症が神経発達の要素を特徴とする疾患であることを示唆した。これらの研究結果は、ためこみ症の複雑な病態やその生物学的基盤の解明に大きな一歩をもたらした。
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