研究課題/領域番号 |
21K07553
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小林 伸行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (20385321)
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研究分担者 |
品川 俊一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90459628)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / DNAメチル化 / COASY / 単純ヘルペスウイルス1型 / VP26 |
研究実績の概要 |
申請者らはアルツハイマー病 (AD)では健常高齢者と比較して、coenzyme A (CoA) 合成酵素をコードするCOASYのDNAメチル化量が大きく変化していることを明らかにした。しかし、この原因は不明である。そのため、以前よりADと関連が報告されている単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1)感染による影響を検討した。神経芽細胞腫由来のSH-SY5Y細胞にHSV-1を感染させたところ、COASY DNAメチル化量は非感染細胞と比較して低下した。興味深いことに、抗ヘルペス薬であるアシクロビル投与下でHSV-1の増殖を抑制した時には、反対に、COASY DNAメチル化量は非感染細胞と比較して上昇した。さらに、immediate earlyタンパクの発現のみでは、COASY DNAメチル化量は有意な変化を認めず、lateタンパクであるカプシドタンパクVP26のみを核内で発現させると、COASY DNAメチル化量は対照群と比較して有意に上昇した。VP26はDNAメチル化酵素であるDNMT3Aと結合することが知られ、DNMT3Aのtranscriptionalな変化ではなく、translationalな制御によって、DNAメチル化が起こることが示唆された。 HSV-1はヒトの脳では潜伏感染しており、上記の結果は、実際にヒトでの現象を再現しているものと考えられた。HSV-1のカプシドタンパクVP26が宿主細胞のDNAメチル化を引き起こす機能をもつことで、ADと関連する可能性を示した。 さらに、HSV-1をAppノックイン(KI)マウスの角膜に接種した。その結果、HSV-1は三叉神経節に潜伏感染することを明らかにした。 また、新たに、WNT5A DNAメチル化が認知症の行動・心理症状 (BPSD)のうち、攻撃性に関わることを明らかにし、論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1)感染によるDNAメチル化への影響を明らかにすることができた。さらに、DNAメチル化を引き起こすウイルスタンパクを明らかにしたことは大きな成果であると言える。上記の結果について、現在、論文投稿の準備を進めている
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の結果は主にin vitroのものである。今後、これらの現象が生体内でも実際に認めるものか、HSV-1を潜伏感染させたマウスモデルを利用して、HSV-1潜伏感染の行動、アミロイドβへの蓄積及び脳への影響を検討する予定である。さらに、ヒト死後脳を用いて、HSV-1とアルツハイマー病 (AD)との関連を明らかにする。そのために、地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター神経病理学研究(高齢者ブレインバンク)と共同研究を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払請求をし、次年度使用額が若干生じた。次年度の経費に加えて、消耗品購入に使用する予定である。
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